2012年03月21日

「火焔の鎖」

20120321「火焔の鎖」.jpg

ジム・ケリー (Jim Kelly) 著
玉木 亨 訳
東京創元社 出版

水時計」の続篇です。前篇からの流れでもっとも気になっていたのは、主人公のフィリップ・ドライデンの妻ローラが元の状態に戻ったかどうかでした。

 ローラは閉じこめ症候群(LIS)という病気で、今作の時点で4年近く入院しています。医師の診断によると、意識はあるようなのですが、開いた眼は焦点が定まらず、躰を動かすことも、会話を交わすこともありません。唯一のコミュニケーション手段は、とても根気がいる方法です。ローラの指がドライデンの手が軽く触れている状態で、ドライデンがアルファベットをA、B、Cと順に読み上げます。ローラは、自分が伝えたい言葉のアルファベットがきたときに微かに指を動かすのです。ドライデンの役割を肩代わりしてくれるCOMPASSと呼ばれる機械もこの作品には登場します。もちろん、タイミングを誤って指を動かしてしまえば、意図する単語にはなりません。それでも、繰り返していくうちに、意味の通る単語が続くこともあり、やはり昏睡状態ではなく覚醒しているんだろうと推測できる程度にローラは回復していました。

 そのローラが、今作品ではドライデンにヒントを与える役割を担っています。そして、ローラがこの病気になる以前に残した鍵も登場し、こちらも重要な役割を果たします。ドライデンの過去と現在を行き来する作品の構成は、前作と変わっていません。事件のほうも、ひょんなきっかけで昔の過ちが蘇ってくる点は前作と同じです。

 加えて、息苦しさをおぼえるような閉塞感がつきまとうこと、伏線が巧みに張り巡らされていることなどを考えると、ロバート・ゴダードに似てる気もしました。ただ、ドライデンが新聞記者でプロとして事件を追っていることや友情が絡んでこないことなど、設定が違います。解説によると著者は、ウィングフィールドを(高く)評価しているそうです。そう言われると、癖のある仲間とのやりとりや複数の事件が交錯する構成は、フロストと似た雰囲気があるかもしれません。

 なかなか読みごたえがあったので、次作が早く出ないかと期待が高まりました。
posted by 作楽 at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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