2012年03月23日

「都市と都市」

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チャイナ・ミエヴィル 著
日暮 雅通 訳
早川書房 出版

 合理的要素もなければ、実際的要素もまったくない決まりごとを法規化したというフィクションのうえに築き上げられた、ある意味荒唐無稽な仮想世界は、まるでゲームの世界のように見えます。しかもそのゲームは、実際的制限を受けない本のなかというフィールドで繰り広げられるために、知性を競うゲームのようにも、人命を人命と扱わないゲームのようにも見えてきます。

 その不思議な仮想世界で、ある殺人事件が起こり、担当刑事は捜査を進めます。ごく一般的なミステリの形式をとっていても、捜査側も犯人側も、奇妙な法規のきわめて厳しい強制力および盲点や弱点を前提としなければならないため、かなり異例な捜査に見えます。ただし殺害方法や動機などは陳腐で、ミステリそのものはあまり期待できる内容ではありません。

 この奇妙奇天烈な決まりごとをどう思いついてどう組み立てていったのか、そして一番の狙いはどこにあるのか、興味があります。というのも、描写が細かく、この独特な世界が著者のなかできちんと確立されていることが伝わってくるからです。また、この作品の魅力や訴えの半分はこの決まりごとに絡んでいるようにも見えます。

 先入観なく(事前にあらすじを知ることなく)読み進めていくうちに、徐々に荒唐無稽な決まりごとが見えてくるという読み方をお勧めしたい作品です。
posted by 作楽 at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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