2012年04月09日

「第二の銃声」

20120409「第二の銃声」.jpg

アントニイ・バークリー (Anthony Berkeley) 著
西崎 憲 訳
東京創元社 出版

 こういう実験小説は、好みです。結末も近くなってから、犯人探しをそんなふうに終えてしまうなんて、それはいい加減過ぎるだろうと思っていたら、その先でさらに驚きが待ち受けていました。しかも、ふたつ。

 読者に対してフェアな作品かどうかは、わかりませんが、わたしにとって面白い作品でした。同じ作家の作品「毒入りチョコレート事件」のときも思ったのですが、ミステリに対してわたしが抱いているイメージを覆してくれる点、人物や人間関係の描写がユーモラスな点が、印象に残ります。

毒入りチョコレート事件」にも登場したシェリンガムが、今回ももっともらしく推理を披露しますが、なかなか残念な結果に終わります。「毒入りチョコレート事件」よりさらにトホホな役回りかもしれません。ただ、語り手であるピンカートンとの会話にくすっと笑えますし、憎めない役柄です。そのピンカートンは、(この作品が発表された1930年という時代を考えると珍しくもないかもしれませんが、)女性に厳しい評価をくだす、中年にさしかかった男性です。その割に女性に疎く、女性が身につけるあれやこれやを眼にしては、どぎまぎする純情ぶりも披露していて、あっさりと恋に落ちてしまいます。さっきまでのあの辛辣な女性批判は何だったのかと唖然としながらも、憎めません。結末とキャラクターが合っていると思います。

 素人探偵が登場するエンタテイメント作品のお決まりのパターンを壊すかのような勢いが感じられるので、機会があればまたこの作家の作品を読んでみたいと思いました。
posted by 作楽 at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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