2006年11月21日

「会話から始めるコーチング―最強のチームをつくるコミュニケーション力」

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伊藤 守 著
大和書房 出版

 ここ数年よく聞くようになった「コーチング」という言葉が目にとまって、今の自分に関係のない本をなんとなく読んでしまいました。

 基本的にチームで仕事をするという体制がない現在の職場では、読んでも実践で使えそうもない内容だけに、冷めた視線で読めたように思います。

 まず、今までリーダーという立場にまったく縁がなかった人が考えるきっかけを持つのにとてもいい本だと思います。平易な言葉で説明されていますし、ひとつひとつのトピックが短く、入りやすい内容になっています。

 また、短い内容の中にも具体的な表現(こういう質問ではなく、こっちの質問を問いかけてみるなど)で書かれているので、実践に活かしやすいという利点があります。

 実際、現場で信頼されている上司は、この中で説明されているアクションをいくつか組み合わせて使っていると思います。

 ただ、こういうことを実践に移すかどうかは、読者自身やその人が置かれている環境を考えて、取捨選択する必要があると思います。私はここに書かれているようなことを実践し、苦い思いをしたことがあります。

 この本では、コーチングをこう定義づけています。「相手が自発的に行動を起こすように働きかけるコミュニケーション・スキル」。つまり、相手が自ら考えるようになるということをゴールとした上で、話は進んでいます。

 具体的なスキルの例として、オープン・クエスチョンという、はい・いいえでは答えられない質問の投げかけ方や「うまくいっている」イメージの作り方を説明しています。これらは、上下関係のある中で、下の人に働きかけると、かなりの確率で期待する効果を得られると思います。素地のある人なら、数度オープン・クエスチョンでリードするだけで、自分で考えるように変わっていくのを見ました。また、ネガティブな思い込みで損をしていた人が自信を持てるようになるのも見ました。

 でも、それはその場全体として、求められているものだったのでしょうか。上と下に挟まれていた私には答えは出せませんでした。私は能力がないほうなので、ひとつひとつのことを完璧に見ることができません。そのため、各担当者が自ら考え判断してくれるようになったことは、プロジェクト運営上好ましいことばかりでした。

 でも、私の上の決裁権を持つ人は、そのことを評価しませんでした。私から見える範囲では、組織をどのように運営していくことが全体にとって利益があるのか、ということをきちんと考えていないように見受けられ、自分の言うことを「はい、はい」ときく人を優遇していたように思われました。

 そして、自ら考えられるようになった人は、あまり考えられない評価者から去り、自分を活かすことができると信じる職場に移っていきました。

 私はこの結果に対して、当人が向上したと受け止められるわけだから、よかったとしよう、と考えることにしました。

 でも、組織としては、もともと平均以上の職務遂行能力を持っていた人材を失ったわけです。

 コーチングを持ち込んだのは正しかったのでしょうか。

 本を読んで知識を得るのは楽しく簡単です。でも、それをどこでどう使うのか、私がいつまで経っても答えが出せないひとつの例です。
posted by 作楽 at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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