2012年08月01日

「ケンブリッジ・サーカス」

20120801「ケンブリッジ・サーカス」.jpg

柴田 元幸 著
スイッチパブリッシング 出版

 東大の先生としても翻訳家としても知られる柴田氏のエッセイです。想像とはまったく違うスタイルというか持ち味のあるエッセイでした。

 教鞭をとったり翻訳を大量にこなしたり雑誌まで出版したり、その広い活動範囲と並はずれた行動量から想像するイメージを裏切る静かな旅のエッセイでした。静かな旅というのは、ここで何かを見つけようという気負いもなく、ふらりと知らない土地を訪れたり、見知った土地の未知の空間に友人を案内したり、ちょっとした発見に喜びを見出すような穏やかな旅です。

 もうひとつ意外だったのは、学生時代のご自身と対話する場面があったり、夢のなかに迷い込んだかのような場面があったり、フィクション風に仕上がっている篇があって、時代背景とあいまって、セピア色した写真を見ている雰囲気を味わえました。なかでも、学生時代の視点でかつての恩師が描かれた場面と、いまの学生の視点で教壇に立つご自身が描かれた場面が並んでいたのが、印象的でした。

 第三者の視点から、かつての自分や現在の自分を書いたエッセイというのは、書いているご本人と本のなかに登場するご本人のあいだに少し距離ができている分、読んでいるあいだ後者が近くに感じられました。
posted by 作楽 at 07:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(エッセイ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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