2006年12月12日

「ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺」

20061212[HanashigaChigau].jpg

田中 啓文 著
集英社 出版

 ビジネスセミナーなどでよく聞くのが、組み合わせの新しさ。つまり、まったく新しいものというのは、簡単には創りだせませんが、既存のものの組み合わせ、特に意外性のある組み合わせによって、新しさを創りだせるというものです。毎日使っているものの例では、携帯電話とデジカメやミュージックプレーヤーです。15年位前、仕事に携帯電話が入り込んできた頃、まさか携帯電話にデジカメが付くなんて思ってもみませんでした。

 そんな話題を本の中に持ち込んだような話がこれ、「ハナシがちがう!」。古典落語とミステリの組み合わせです。まさか、ミステリに古典落語を持ってくるとは、思いませんでした。"取り合わせの妙"という言葉が真っ先に思い浮かびます。

 ミステリはミステリ、古典落語は古典落語、とまったく別々に見ていたものが、すぐそばに存在しあうことによって、それぞれの持ち味が浮き出てきます。それは、登場人物のコントラストにも同じことが言えます。

 落語の師匠は、借金まみれでいつも取り立て屋から逃げている上、大酒呑みでしょっちゅう酔っ払ってます。おまけに桁外れに暴力的。弟子の歯を折るくらい殴るのは当たり前。昔ながらのうるさいジジイ。一方、弟子入りする少年は、この本の表紙にあるとおり鶏冠頭のイマドキの子供。我慢も知らなければ、他人にも興味がありません。そんなふたりが師弟としてやっていけるのかと思うところからハナシは始まります。

 エピソードは全部で7つ。各エピソードにひとつずつ古典落語が登場し、ひとつずつの謎解きが披露されます。ちなみに、落語は、「たちきり線香」「らくだ」「時うどん」「平林」「住吉駕籠」「子は鎹」「千両みかん」。

 落語がひとつずつ登場するたびに、弟子と師匠は理解しあい、その良さを認め合うようになっていきます。また、弟子が成長していく中で、落語の良さというのが徐々に見えてきます。もちろん、それは、生の落語なんて一度も見たことがない私のことであって、「最初から落語の良さはわかっているわぃ」という方は別だと思います。でも、弟子がその良さに気づいていく過程は、うんうんと頷ける楽しさがあるのではないでしょうか。

 本格ミステリの謎解きを期待される方には向かないと思いますが、日本人なんだから、落語くらい知っておきたいと思いながら、なかなかその機会がなかった私のような方が入り口に選ぶにはいい本だと思います。

 私も一度、落語を生で見に行きたいと思います。
posted by 作楽 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(1) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺
Excerpt: 作者:田中啓文 金髪鶏冠(とさか)頭の竜二。無理やり上方落語の大御所、笑酔亭梅
Weblog: 今日の一冊
Tracked: 2006-12-13 22:13