2007年01月18日

「初恋温泉」

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吉田 修一 著
集英社 出版

 「女たちは二度遊ぶ」以来の吉田 修一氏の作品。「女たちは二度遊ぶ」と同じく、恋愛小説短編集です。

 「女たちは二度遊ぶ」を読んだときも何となく感じたのですが、今回は以前より、はっきりと思いました。吉田 修一氏の作品は、男女の関係の脆さやすれ違いの描写がうまいと思います。

 「初恋温泉」には、5編の短編が収められているのですが、すべて、温泉が舞台になっています。離婚間際のカップル、結婚間近のおしゃべりなカップル、W不倫のカップル、夫ひとりで温泉に来る羽目に陥ったカップル、高校生カップル、とバリエーション豊かなカップルが登場します。

 ただ、どの男女のつながりにも微妙な危うさを感じるのです。その脆そうな感じが、とても現実感があり、思わず共感してしまいます。

 過去を振り返り、あのとき、なぜそうしたのか、違う選択をしていれば、違う今があったのではないかと迷うような感覚。人から言われたことや人と比較して気づいたことなどから、自分はあるいは自分たちはこれでいいのか、と揺れる感覚。この先、どうなるのか見えない不安定さ。そういう誰もが経験するような感情が緩やかにオーバーラップする話は、するすると引き込まれてしまいます。

 現実感のないハッピーエンドの恋愛小説からは受けない、自分の記憶の一部とリンクするような共鳴があります。
posted by 作楽 at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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