2013年02月13日

「漢字と日本人」

20130214「漢字と日本人」.jpg

高島 俊男 著
文藝春秋 出版

 ノンフィクションを読んで感動することは滅多にないのですが、これは感動ものでした。すごくわかりやすく、読み終えたあとは、日本の漢字に「これまで大変だったね」と声をかけてあげたくなるほどでした。

日本語と漢字文明」などの本を読んだことがあって、日本の漢字の歴史に対して基礎的な知識をもっていると自分では思っていました。でもそれは、歴史の教科書を通り一遍に読んだようなもので、生々しさに欠ける表面的な知識でした。

 この本を読むと、日本人がどういう気持ちをもって漢字を取り入れ、どういう気持ちをもって漢字を廃止しようと考えたかが相当リアルに伝わってきます。そうすると、常用漢字やら当用漢字やら、訳のわからない分類や文字の選択がなされたことすらも、やむを得ない判断だったように思えてきたのは、自分でも不思議でした。手当たりしだいに英語を日本語に取りこんできた時代、特にIT分野に深く関わってきたせいかもしれません。世代や分野が異なる方々が同じ感想を抱くかについては、甚だ疑問ですが、少なくともわたしにとっては、日本語の変遷をいままでよりずっと肯定できる気持ちになりました。

 巻末のあとがきで、著者はこう書かれています。

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 よんでいただけばわかるが、わたしの考えは、まず第一に、漢字と日本語とはあまりにも性質がちがうためにどうしてもしっくりしないのであるが、しかしこれでやってきたのであるからこれでやってゆくよりほかない、ということ、第二に、われわれのよって立つところは過去の日本しかないのだから、それが優秀であろうと不敏であろうと、とにかく過去の日本との通路を絶つようなことをしてはいけないのだということ、この二つである。
 あとは、およみくださったみなさまの御判断をまつのみであります。
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 わたしたちは、過去を認識したうえで、これからどうするべきなのかを考えていくべきなのでしょう。

 そして著者は触れられていませんでしたが、これからの時代、もはやコンピューターのない環境に戻ることはできません。コンピューターで漢字をどう扱っていくのかも、併せて考える必要があるのです。漢字を使う立場としての考察を生んでくれた本だと思います。
posted by 作楽 at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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