2007年02月20日

「「頭がいい人」と言われる文章の書き方」

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小泉十三と日本語倶楽部 編集
河出書房新社 出版

 昔、米国で、大学新入生が必ず受けなければならない英語の授業を受けたことがあります。英語を母国語としない私にとって、緊張する授業でした。

 その授業では、エッセイと呼ばれる小論文を何度か提出し、その評価によって成績が決まるといっていいような点数配分になっていました。そのため、生徒はみなエッセイの評価を気にします。だから、先生は、各生徒のエッセイを読み終えると実際のグレード(A、B、Cなど)は言わないのですが、コメントを電話で知らせてきてくれます。

 エンジニアを1年間休んで留学していた時期で、コンピュータは私の得意分野でした。あるエッセイで、コンピュータウィルスにまつわる一般ユーザーの誤解とそれに対する正しい認識と対応を書きました。まだインターネットが使われだした頃で、ウィルス対策に対する知識を持たない方々のほうが圧倒的に多い時代でした。

 論旨の展開における日英の違いには注意を十分払いました。文法も持てる力をすべて使うつもりで、何度も推敲しました。また、コンピュータウィルスに関する誤解のあたりは少しユーモアを交えながらも、くだけ過ぎた感じではなく、アカデミックな感じを心掛けました。時間を掛け、努力を惜しまず、いい評価をもらえるものと期待して提出しました。

 先生から電話が掛かってきました。緊張しながら、コメントを聞いていると、最初にこう言われました。「いいトピックを選んだね」

 エッセイの展開でもなく、文法の正確さでもなく、トピックの選択を褒めてくれるのか、とがっかりしました。ほかにいいところはないと言われたように感じました。

 でも、それは間違っていました。続きを聞いていくと、私が詳しい分野をトピックに選んだことにより、詳細を描写することができ、一部笑いを交えることもでき、文章の展開にも無理が感じられないとのことでした。逆に、よく知らないことを書くと、断定できることもなく、反対意見に対する反論も弱くなります。

 このできごとをつい最近のことのように鮮明に思い出すことができたのは、この「「頭がいい人」と言われる文章の書き方」にも同じようなことが書かれていたためです。「自分がわからないことは書かない」や「自分の"鮮烈な体験"について書く」などのタイトルがつけられ、テーマの選び方などについて、具体的な指摘がなされています。

 そのような大きな話題だけでなく、文章を書く上での細かな注意点についても、幅広くカバーされています。私が常々疑問に思っていたのは、どこを漢字にして、どこをひらがなにするかということです。いつも迷いながら、その都度感覚で決めてきました。良くないと思いながらも、どうすればいいかわからなかったのです。本書が用意してくれている答えはこうです。「意味によって、漢字とかなに使い分けたほうがいい。」具体例は、「たとえば、「物」の場合、いつも漢字では読む側に違和感を与えることがある。「物を運ぶ」「物を選ぶ」といったときは、漢字の「物」でいいが、「物わかりが悪い」「物にする」といった場合、漢字の「物」ではそぐわない感じがするものだ。つまり、漢字の「物」は具体的な物や品を表すとき、ひらがなの「もの」は抽象的なものを指すときという具合だろうか。」こういうルールを自分で決めればいいのだという指針になりました。

 他にも例を挙げればきりがありませんが、文章を書く上で参考になることが必ず見つかるはずです。私も、また忘れた頃に再読したいと思います。
posted by 作楽 at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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