2007年04月09日

「After」

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Francis Chalifour 著
Tundra Books 出版

 「老後がこわい」で、香山リカさんは、今はご健在のお母さまを失ったときに自分がその喪失感から立ち直れるのか不安だと書かれています。香山さんと言えば、テレビのコメンテーターとしても有名で、医師として大活躍されているイメージがあります。ご自分の立場や意見を確立し、自立されているようにしか見えない香山さんでも、親御さんを失う恐怖に慄いている、というのは少し意外なものの、自分も似たようなものだと思うと、人間とは、本音ではそういうものかもしれないと思います。

 いつかは来るとわかっていても、いい歳をした大人が、親との別れを怖いと思っているくらいですから、子供ならなおさらです。しかも、親が自分たちを残して自殺してしまったとしたら。

 そういう喪失感が綴られているのが、この「After」。

 主人公のFrancisが15歳のとき、父親が自殺します。その後の1年間のことを振り返る形で物語は進みます。

 Francisが12歳のとき、船乗りだった父親は職を失い、新しい仕事にも就けず、暗くふさぎこむようになります。Francisが14歳のとき、父親は自殺しようとし、帰宅したFrancisに見つけられ、命拾いします。そして、15歳のとき、Francisが学校行事でNew Yorkに旅行中、屋根裏で首を吊り亡くなります。

 父親が亡くなったあと、Francisは、なぜ父親を残してNew Yorkなどに行ったのか、と自分を責めます。また、友人の両親は元気で、自分の父親が亡くなったことに、理不尽さを感じます。一方、自分の父親は自分たち家族を残していくのをどう思っていたのか、父親に直接きいてみたいと考えます。

 母親を気遣ったり、死を理解できない歳の離れた弟の面倒を見たり、日常生活において一生懸命生きていながらも、Francisは心に大きな塊をずっしりと感じていることが手に取るようにわかります。

 周囲からすれば、「考えても仕方のないこと」と片付けられてしまうような少年の心の葛藤が細やかに描かれているのです。

 暗い気持ちになってしまう本ですが、もし、誰かを失った喪失感に悩まされているなら、あるいは悩まされたことがあるなら、一読されたらいい本だと思います。
posted by 作楽 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:9-12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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