2014年01月15日

「死神の浮力」

20140115「死神の浮力」.jpg

伊坂 幸太郎 著
文藝春秋 出版

死神の精度」で登場した千葉という死神が長篇で大活躍します。

 人間の言動を熟知していない千葉の的外れな発言は「死神の精度」でも、たびたび眼にしましたが、今回は、その見事な外れっぷりに前回以上に笑ってしまった気がします。というのも、千葉が今作で<死ぬべきときにある人間かどうかを>調査している対象の男性は、小学生の娘を殺され、その殺人犯が無罪判決を得て出所してきたところを妻と一緒にいたぶり殺そうとしているのです。そんな追い込まれた状況にある夫婦と仕事ゆえに夫婦に張りつく千葉のギャップが、なんとも言い難い空気を生んでいます。

 夫妻は、邪悪の化身ともいうべき犯人に様々な罠を仕掛けられ、追い込まれていきます。千葉は、そんな夫妻に張りついて調査するために、夫妻の役に立てるよう努めます。常識的に考えれば、これから罪を犯そうという人間が、見知らぬ他人をそばに置いておきたいわけがありません。しかし、千葉が夫妻の役に立てるよう努力する以上に千葉は、夫妻の役に立ち、無事1週間の調査を終えることができます。

 その1週間の進展は、山あり谷ありで、読んでいて退屈する暇もありません。張られた伏線がきれいに回収されて、読後感のいい終結を迎えます。世の中の理不尽を当然のことと冷ややかに見るだけでなく、悪あがきしてみるのもいいかもしれないと、束の間しみじみしました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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