2014年02月05日

「どこよりも冷たいところ」

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S.J. ローザン (S.J. Rozan) 著
直良 和美 訳
東京創元社 出版

 シリーズ4作目です。「ピアノ・ソナタ」に続いてビルの視点で語られる2作目なのですが、今回は、ビルがレンガ工になって建築現場で潜入捜査をするというもの。あまりに無理のある設定ではないかと思ったものの、ミステリとしては、これまで読んだシリーズのなかでは一番好きです。

 好きな理由は2つあって、ひとつは好感のもてる登場人物がいること。もうひとつは、人と人のすれ違いがしっくりくるかたちで描かれていること。

 好感のもてる登場人物というのは、建設現場でビルの相棒として働いているレンガ工のマイク・ディメイオです。マイク自身の仕事に対する姿勢や、長年探偵として働いてきたマイクのレンガ工としての仕事ぶり(当然、腕はなまっているわけです)を評価する観点などから伺える価値観に共感できるだけでなく、その人物描写が無理のある潜入捜査を可能なものにしています。やはりミステリーとしては、隠された何かを暴くプロセスに無理があると楽しめないので、それなりのリアリティを感じられる設定は評価できます。

 人と人のすれ違いの中心となっているのは、チャック・デマティスというビルたちの同業者です。今回は、このチャックから依頼を受けたビルがリディアに助っ人を頼むという設定です。チャックには、幼いころから家族ぐるみの付き合いをしながらも、別々の道を歩むことになった友人がいます。その友人に対する複雑な思いがこの事件と離れようもなく絡まり、この物語に深みがでている気がします。

 始まってから軽く10年を超えるこのシリーズが途絶えることなく翻訳されている理由は、このような謎とそれ以外の人物描写のバランスにあるのかもしれません。
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