
北原 保雄 編
大修館書店 出版
わたし自身が使った実感ではありませんが、「明鏡国語辞典」は、その解説が個性的だという評判です。その明鏡国語辞典の編者がこの本も編集しています。
国語学者でもなんでもない一般人が問いを投げかけ、それに「明鏡国語辞典」の編集委員数人が交替で答えるという形式になっています。問いの多くは、こういう言葉の使い方は誤りではないのか、あるいは、こういう言い回しは間違っているけれど定着していくのだろうかといったことです。
個性的と評判の「明鏡国語辞典」の編集委員が答えているのなら、独断的な解説になっているのではと思いながら読み始めましたが、その予断は、間違っていました。
有無を言わせず誤用と断じているのはほんの一部で、まだ言葉の変化の途中にあるものだからもう少し様子を見るべきではなかろうかとか、気持ちはわかるが聞き手に正しく伝わらないことを自覚すべきではないかとか、言葉が、時代とともに変化することも使われる状況によって受けとられ方が変わることも考慮されたうえでの回答だと思われるものばかりで、共感できました。話し手の心理や似た音の言葉の影響など様々な要素が絡み合って生まれた言葉の変化をできるだけ解しながら伝えようとする姿勢が感じられ、気持ちよく読めました。
ある回答では、自分が特定の言葉を使ってしまう理由を気づかされました。"全然"という言葉は、否定を伴って使うべきだと頭では理解しながら、"全然大丈夫"とか"全然平気"とつい言ってしまうのですが、この"全然"の使い方に対する解説には、なるほどと納得し、これからは"全然大丈夫"と言ってしまっても、あまり気にしないでおこうという気になりました。
期待していた何倍もの発見がありました。