2014年02月26日

「殺人者と恐喝者」

20140226「殺人者と恐喝者」.jpg

カーター・ディクスン (Carter Dickson) 著
高沢 治 訳
東京創元社 出版

 一風変わった殺人事件なので、惹きこまれて一気に読んでしまいました。変わっているのは、犯人が直接手を下すのではなく、狡猾に仕組んだ罠によって第三者に邪魔な人間を始末させる点、密室ではないものの一種の不可能犯罪である点、登場人物いずれにも動機が見つからない点などです。

 読了して最初に思ったのは、この不可能犯罪を可能にしているトリックのお粗末さは勘弁してほしいということでした。その一方で、巧みに隠された動機は、読者にもヒントが提示されてあり、わたしには無理でも勘の冴えた読者なら、見破ることができたかもしれないと思う内容でした。

 トリックの解明は最低、動機の解明は最高、といったミステリの主要素に対し両極端な印象を受けましたが、作品全体としてみたときは、好ましい印象をもちました。それは、ユーモアたっぷりに描かれている登場人物を楽しめたからだと思います。探偵役を務めるヘンリ・メリヴェール卿は有能であるだけでなく、辛辣に当てこすったり、度の過ぎたいたずらを自慢したり、楽しい人物です。また、ヘンリ・メリヴェール卿のゴーストライターであるフィリップ・コートニーは、33歳にもなってひと目惚れした女性を前におろおろしてしまう好青年で、この恋がどういう結末を迎えるのか気になりました。

 解説によると、カーター・ディクスンの作品としては駄作に分類されている本著だそうですが、惹きこまれて読んでいた自分の時間を思うと、駄作で片付けてしまうのは惜しい気がします。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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