2014年03月18日

「苦い祝宴」

20140318「苦い祝宴」.jpg

S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
直良 和美 訳
東京創元社 出版

 ビルとリディアが交互に語り手になる当シリーズ第5作です。「新生の街」に続いてリディアが引き受けた依頼は、やはり中国系アメリカ人から持ちこまれたものです。

 依頼内容は、失踪した4人の中国人を探してほしいというもの。うち2人は、不法入国者のため、白人が4人の足跡を辿ろうとしても、中国人からは何も情報を得られないことが目に見えています。そのため、リディアがリードするかたちで捜査が始まります。

 中国社会が抱える問題や中国からの移民の実情が垣間見えるこの作品で一番印象に残ったのは、物語の最後で「中国人だから」というだけで、何かを強要されることにリディアが辟易しているところです。たとえば、中国人だから中国人を助けて当然だとか、個人の意思ではなく、人種でひと括りにされるのは確かに辛いと納得できます。その一方で、「中国人だから」と自分の価値観の根拠をアイデンティティにおく発言もしていて、それにも納得できます。

 そのふたつは矛盾しているように見えても、現実の感覚であり、自然な感情だと思います。そういうところを描いているリディアの視点に色々気づかされることがあるので、このシリーズには、謎の解決に劣らない楽しみがあります。次は、中国の何が描かれるのでしょうか。
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