2014年04月08日

「春を待つ谷間で」

20140408「春を待つ谷間で」.jpg

S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
直良 和美 訳
東京創元社 出版

 ビルとリディアが交互に語り手をつとめる当シリーズ6作目は、ビルがニューヨークを離れて依頼を受けるという設定です。場所は、ビルが山小屋で休暇を過ごすアップステート・ニューヨークです。地元民を雇用できる企業が皆無に近いこの郊外は相対的に貧しく、子供たちに優れた教育を受けさせるのも難しく、リディアが住むチャイナタウンとは違った意味で、格差が見受けられる環境です。

 休暇を過ごす場所でビルが探偵としての依頼を受けるのは意外な気がしますが、依頼者であるイヴ・コルゲートに対して何か感じるものがあったのでしょう。イヴ・コルゲートは当初、尊大なイメージで登場しますが、徐々に印象が移ろいでいきます。

 イヴ・コルゲートが本音を語るまでの紆余曲折や豊かな国アメリカと十把一絡げに語れない格差社会の歪みなど、この作家の徐々に核心に近づいていく描写は、読むたび上手いなあと思います。華やかさはないものの、小さな発見をしたときのちょっとした喜びのような満足感が読後に感じられました。もう少しこのシリーズを読み続けたいと思います。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック