2014年06月27日

「女郎蜘蛛」


20140627「女郎蜘蛛」.jpg

パトリック・クェンティン (Patrick Quentin) 著
白須 清美 訳
東京創元社 出版

 女郎蜘蛛と呼ぶに相応しい登場人物にピーター・ダルースは、翻弄されます。しかも徹底的に。

 このダルース夫妻シリーズは、事件に巻き込まれ、乗り気ではないのに探偵の真似事をせざるを得なくなるタイプのコージーミステリですが、今作はその追い詰められ感が尋常ではありません。なにしろ夫のピーターは、愛する妻アイリスからの信頼を失うかというところまで追い詰められます。(ちなみにこの「女郎蜘蛛」がダルース夫妻シリーズの最終作品だそうです。)

 秀でた人物造詣を楽しめると同時に少しばかり恐怖も味わえます。読んでいて「こういう女性っているよね」と小説相手に勝手に頷いているうちはいいのですが、そのうち「こういう人たちとの付き合い方を間違えると怖いのね」と、妙に現実的な危機感が感じられるようになり、この策略の綻びがどこかにないかと目を皿のようにして捜したい気分になるのです。

 ピーターは、物語の前半では、もっぱら愛する妻や社会的信用を失うのではないかという不安に陥り、後半になって初めて警察に追われるという悲壮感に包まれるため、犯人探し部分が、些かスピーディ過ぎる展開になっている気がしないでもないですが、最後までひと息で読みたくなる魅力があり、存分に楽しめました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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