2014年06月28日

「湿地」

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アーナルデュル・インドリダソン (Arnaldur Indridason) 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社 出版

 一気に読み進めたくなる勢いのある作品です。家庭が崩壊した中年男性刑事が担当する殺人事件の捜査からは、一直線に犯人まで突き進んでいく印象を受けます。その一直線の道筋を支えているのが現場一筋の刑事の勘であり、突き進む原動力となっているのは犯罪に馴れることなく真相を追求する刑事の熱意です。そのあたりの人物造詣もこの作品の大きな魅力になっています。

 またこの作品の舞台となっているアイスランドがどのような土地なのか、読者の興味を惹く巧みな構成になっています。冒頭、69歳の男性が殺害され、現場を見た若手刑事は、証拠隠滅を図ろうともしないアイスランドの典型的な犯行だと言います。「アイスランドらしさ」がどういうものか実感が湧かなくても捜査が進むにつれ、その社会の狭さが感じとられるようになり、最後に明かされる謎がまた島国であるアイスランドの特徴と強く結びついています。訳者あとがきによると、この「アイスランドらしさ」は作家の作品に対するこだわりのひとつのようです。

 三十万人しか話者のいないアイスランド語で書かれたこの作品は、様々な言語に翻訳されシリーズで700万部売れたそうです。翻訳された作品の場合、この作品のようにその国らしさが感じられるというのは、ひとつの魅力になると思います。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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