2014年06月29日

「ロウソクのために一シリングを」

20140629「ロウソクのために一シリングを」.jpg

ジョセフィン・テイ (Josephine Tey) 著
直良 和美 訳
早川書房 出版

 イングランドを舞台とする警察小説なのですが、地元警察の署長の娘が活躍する場面もあって、敏腕警部が颯爽と事件を解決するというより、地道にひとつひとつ可能性を潰しながらやっと犯人に辿りつくといったタイプの犯人探しです。

 とりわけ楽しめたのは、人物描写です。主役にかぎらず、登場人物はみな、その行動や発言から個性が浮きあがってくるように活き活きと描かれています。わたしの好みでは、署長の娘エリカが抜きんでています。(ちなみに、このエリカとエリカが助けたロバートという青年の部分は翻案されて、アルフレッド・ヒッチコック監督の「第三逃亡者」(1937年)になっているそうです。)

 ほかにも冒頭で死体となって登場するクリスティーン・クレイは、生きているときの描写はほとんどありませんが、彼女の遺言書が雄弁にその人となりを物語っていて、想像が膨らみました。(タイトルの「ロウソクのために一シリングを」は、その遺言書からきています。)

 また、主人公のグラント警部の人物観察が意外に細やかで、くすりと笑える場面もありました。このグラント警部は、ほかの作品にも登場するようなので、読んでみたいと思います。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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