2014年07月15日

「生半可な學者」

20140715「生半可な學者」.jpg

柴田 元幸 著
白水社 出版

 何かしら英語の表現に絡めて書かれてあるエッセイです。何かしら、というのは、繋がりにちょっと無理があるかも……と思う場面があるという意味です。

 展開の滑らかさに少しばかり難があるとはいえ、知らない英語表現や薀蓄、著者の少し意外な着眼点などを楽しく読めました。

 なかでも、これでスッキリできたと思ったのは、「変温動物の戸惑い」というタイトルでとりあげられていた We です。(変温動物と人称代名詞の We の繋がりが見えないと思いますが、そこはともかく) we の用法には、editorial we (新聞記者などが社を代表する立場で記事を書くとき、I ではなく we を使用) や royal we (日本語の朕に当たる言葉として we を使用) が説明されています。それ以外のケースで、ひとりなのに、we を使うのはやはり不自然だと著者は説明しています。その不自然な例として挙げられているのが、レイモンド・カーヴァーの「でぶ」です。

 実は、この「でぶ」に登場するのは、丸々と太っていて山のように食べる男性とその男性に給仕するウェイトレスなのですが、その男性が"私ども"は、何々をいただきたいと注文するのです。連れがいる描写は、まったくないのに。思わず何かを見落としたかと前に戻って読みなおしても、やはり男性ひとりで、変だと思っていました。著者のこの短篇に対する評価を読んだことによって理解が深まりました。

 カーヴァーの短篇集を読んでまもなくこのエッセイ集を読んだのは幸運でした。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(エッセイ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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