2014年08月03日

「夜の試写会」

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S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
長良 和美 訳
東京創元社 出版

チャイナタウン」や「ピアノ・ソナタ」と同じ探偵シリーズの短篇集です。ビルとリディアが交互に視点を担うところは同じですが、依頼人らしい依頼人が登場しなかったり、依頼を受けても相棒が登場しなかったり、長篇とは違う構成も楽しめます。

 以下が収められていますが、わたしが一番好きなのは、「ただ一度のチャンス」です。ビルが語り役になっている、アメリカらしさが感じられる作品のほうが、リディアの中国社会を描く作品よりもわたしの好みに合っています。

−夜の試写会
−熱き想い
−ペテン師ディランシー
−ただ一度のチャンス
−天の与えしもの
−人でなし
−虎の尾を踏む者

「ただ一度のチャンス」では、アメリカの格差が描かれています。教え子にプロ選手としての成功を掴んで欲しいと願う高校教師の想いが実らない切ない結末では、格差に敢然と立ち向かって成功を手にするには、個々の想いだけでは難しいという現実に直面させられます。読んでいてそこに割り切れなさを感じても、それでもやはりその社会の一部を切りとったこの作品に好感がもてました。
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