2014年08月30日

「イン・ザ・ペニー・アーケード」

20140830「イン・ザ・ペニー・アーケード」.jpg

スティーヴン・ミルハウザー (Steven Millhauser) 著
柴田 元幸 訳
白水社 出版

 この本の翻訳をされた柴田氏がエッセイ集「死んでいるかしら」で絶賛していた「アウグスト・エッシェンブルク」が収められています。以下が全作品です。

第一部
−アウグスト・エッシェンブルク
第二部
−太陽に講義する
−橇すべりパーティ
−湖畔の一日
第三部
−雪人間
−イン・ザ・ペニー・アーケード
−東方の国

「アウグスト・エッシェンブルク」は、19世紀が舞台になっていて、現代の合理主義や拝金主義をしばし忘れて読むことができる作品です。

 主人公アウグストは、天才的なからくり人形師です。目指すものは自分が得心のいく人形をつくることであって、聴衆の歓心をかうことも、生産性をあげることも、作品に高値をつけることも、まったく興味がありません。幼き日に遭遇した衝動、自分でもからくりを仕掛けてみたいという抗うことのできない思いを成就すること以外に何も関心がありません。すべてが自らの内面で完結しているのです。ただ周囲は天才的技巧の持ち主である彼を放っておいてくれません。そんな周囲とのかかわりを経てもなおアウグストは最後に自身の原点である内面に帰っていきます。その回帰は、少し古い時代背景とあいまって不思議な空気を醸しています。

 ここに収められている作品はみな、ストーリーよりも内面や景色の描写に重きがおかれている気がしますが、この「アウグスト・エッシェンブルク」だけは、描写に負けないストーリーがあって、わたしの好みでした。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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