2014年09月23日

「北京から来た男」

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ヘニング・マンケル (Henning Mankell) 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社 出版

 冒頭、19人もの村人が惨殺されるという猟奇的殺人がスウェーデンの郊外で起こり、警察が捜査に乗りだします。そして事件を解決するのは、どうやらスウェーデンの裁判官ビルギッダ・ロスリンのようです。被害者に母親の養父母あるいは親戚が含まれるのではないかと思ったロスリンは、事件現場に赴き、意外な発見をします。

 その流れで、裁判官を探偵役に据えるという風変わりなフーダニット・ミステリと思って読み始めましたが、上巻を読み終えるころには、黒幕も動機もはっきりしてしまいます。

 誰が犯人か、動機は何か、どのように犯行が行われたか、殺人事件を前にして最初に思い浮かべるような謎を追うだけでなく、作家は、殺人事件の動機を通して、謎を解くロスリンの過去を通して、何かを見せたかったのではないのだろうかと推測します。

 わたしが感じたのは、搾取されたり裏切られたりした祖先の私怨をはらそうとした子孫が、社会的に見て搾取する側であり裏切る側であるという矛盾でした。そして見たこともない祖先のために東奔西走して多大な犠牲をはらうことはできても、一緒に育った姉を慈しむことはできないという矛盾でした。

 それらの大きな矛盾がどこから生まれたものなのか、考えさせられました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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