2014年09月26日

「シャンハイ・ムーン」

20140926「シャンハイ・ムーン」.jpg

S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
長良 和美 訳
東京創元社 出版

 ビルとリディアのシリーズ第9弾は、リディア視点で進みます。前作の「冬そして夜」のあと、ビルがリディアと距離を置くようになり、何かあったときに頼る相棒不在のままリディアは、ジョエルというユダヤ系アメリカ人の探偵と一緒に仕事をすることに……。

 ビルとリディアのシリーズ作品なのに、ビルが不在のままでどう展開するのかと思うのもつかの間、ジョエルは、自分たちが受けた案件が「どうもうさんくさい」と言いだし、事件が起こります。

 敵も味方もわからない状況下で、複雑に絡みあう過去のできごとと現在の人間関係をひとつずつ解きほぐしていく羽目になったふたりの謎解きそのものもおもしろいのですが、その過去のできごと自体がよくできた物語になっています。ドイツがユダヤ人を迫害し、その同盟関係にあった日本が中国でユダヤ人を収容するための施設を管理していた時代の話なのですが、そういう時代に翻弄されながらも、家族を支えに生きた人々のそれぞれの想いが伝わってきます。

 リディア視点の作品はいずれも多かれ少なかれ家族がテーマになっていますが、今回は国や人種を超えた家族の話だったので、中国人社会を描いたほかの作品に比べて共感できました。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック