2007年05月07日

「夜逃げ屋」

20070507[Yonigeya].jpg

羽鳥 翔 著
幻冬舎 出版

 初めてその手の話を聞いたときには、驚きました。話の内容にではなく、そういう話に対する男性のリアクションが私には意外だったのです。

 残業、残業の連続で、奥さんから話があると切り出されても、仕事が落ち着いてから、といい続けていたエンジニアの先輩が、ある日家に帰ると、奥さんの持ち物が何一つなく、家の中はがらんとしていたそうです。結婚するときに持ってきた大きな家具から靴1足まで、すべて運び出されていたということです。

 こういうことは、男性の視点からすると、ありえないことだそうです。一方、奥さんと同性である私の目からすると、いつまで続くかわからない宙ぶらりんの状況に長期間置かれて行動を起こすなら、こういう方法も当然選択肢のひとつに入ってくるだろうと思うのです。

 そんな私から見て、夜逃げといわれるような訳アリ引越しを請け負っていた著者の経験がノンフィクションでまとめられたこの本において、一番リアリティを感じるのは、次の一節です。
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 今まで数多くのコールサインの依頼を扱ってきたが、やはりこんな時は女の方が決断が早い。やる! と決めたら話は大変スムーズだ。反対に男のほうは、やっぱりどうしよう・・・・・・、女房とやり直そうか、仕事は、家族は、と直前になりあれこれと考え出す。
 どうやら今までの生活より先の生活を夢見るのは女性で、過去を引きずるのは男性のような気がする。
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 コールサインとは、転居先などを秘密にしなければならない、いわゆる夜逃げのことです。数多く請けてきたコールサインの中から、印象に残る引越しの経緯が展開されるこの本において、「逃げる」ための引越しを請け負い続けてきた理由を著者はこう説明します。「逃げることが決していいことだとは思わない。だが、夜逃げが人生をやり直す、そのきっかけとなるなら−−」

 その思いで受けてきた仕事には、それぞれの事情があり、感情があり、人生をやり直せたり、やり直せなかったり。

 「がんばってぇ」と声を掛けたくなるような場面、「それは、あまりにもひどい」と同情したくなる場面、「最後はハッピーエンドでよかった」と胸をなでおろしたくなるような場面。さまざまな場面にでくわすたび、単純に感動したり、生きていくってやっぱりいいことなんだなぁ、と再確認たり。不謹慎な表現かもしれませんが、おもしろい本に仕上がってます。
posted by 作楽 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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