2007年05月28日

「魂の文章術―書くことから始めよう」

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Natalie Goldberg 著
小谷 啓子 訳
春秋社 出版

 量の面だけを見ればコンスタントに本を読んでいる私が積読状態にしてしまう本というのは、今必要とする情報が載っていないことのほか、とっつきにくい何かを感じさせるものです。

 この「魂の文章術」が、実は1年近くも積読状態になってしまっていたのは、最初にペラペラとページを繰ったときに、この部分が目に飛び込んできたから。
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1.手を動かしつづける(手をとめて書いた文章を読み返さないこと。時間の無駄だし、なによりもそれは書く行為をコントロールすることになるからだ)。
2.書いたものを消さない(それでは書きながら編集していることになる。たとえ自分の文章が不本意なものでも、そのままにしておく)。
3.綴りや、句読点、文法などを気にしない(文章のレイアウトも気にする必要はない)。
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 私の場合、文章を書くときはいつも、行きつ戻りつを繰り返し、書いたところまでを読み返しては先を考えるという具合なのです。そんなのは文章を書いていることにはならないとバッサリ切り捨てられるのではないかと、心のどこかで恐れていたから、この本を避けていたのでしょう。

 事前にそういう苦手意識を持っていてもなお、本全体を通して読んでみると、著者が言いたいことが本当によくわかり、もう手放したくないと思える本です。

 この本が教えてくれることは、文章を書くための小手先の技術ではありません。自分という人間の内なる部分を文章という形にして吐き出し、その中から価値あるものを見つけ出し、世に出していければ出していこうというものです。

 自分が妄信的に作り上げてしまった「こうあるべき」というイメージを捨て、ありのままの自分から溢れ出てくるものを文字にし、ただ書き続けることによって不安や自己嫌悪の壁を乗り越え、文章の山から光輝く宝石を切り出す作業を繰り返す。文章を書くとはそういうことだと、著者は教えてくれます。

 この本を読んだ後なら、しごく当然のことと思えることです。目に飛び込んできた風景、自分の中の不平不満、何でもいいのです。とにかく書くこと。たくさん書いた上で、厳しい目をもって不要なものを切り落としていく。

 人に響くいい文章を書くには、とにかく量をこなす必要があることさえ、私は理解していませんでした。この本を読む前の私は密かに、最初からうまく書けるようになる方法がどこかにあると思っていたのです。

 どんなに好きなことをしていても、壁にぶち当たることはあります。こんなことをしていて意味があるのかと思うときもあるでしょう。でも、文章という形にすることを楽しいと思ったことがあるのなら、この本を手にとれば、またその楽しさの中に戻っていけるように感じます。
posted by 作楽 at 00:37| Comment(2) | TrackBack(1) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
購入した書籍の7割以上が積読のわたしがやってきましたーorz(←明け方なので許してやってください・・・)

こんばんは、またまたトラックバックしてしまいました。

文章を書くことってのは奥深いですね。そんなふうに感じさせられてしまったのでした。この本をご紹介いただき感謝です。
Posted by nadmirer at 2007年06月17日 04:40
nadmirer さん

コメントとトラックバック、どうもありがとうございます!

これは余談ですが、法政大学には、金原瑞人さんという教授がいらっしゃいます。社会学部なのに、小説創作ゼミを担当されていて、そこからは作家が3人生まれています。

その授業の進め方が、Natalieさんのワークショップスタイルにそっくりです。金原氏自身は、アメリカで見てきて、面白そうだと始められたとおっしゃっています。
やはり、とにかく書くということは効果があるのでしょうか。文学部ではなく、社会学部のゼミから小説家が3人ですもの。それを知って少し驚いたものの、おもしろいと感じたので、書いてみました。

Posted by 作楽 at 2007年06月19日 20:31
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