2007年05月29日

「本の読み方 スロー・リーディングの実践」

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平野 啓一郎 著
PHP研究所 出版

 ひとことで感想を言ってしまうと、前半はおもしろくなくて、後半はおもしろい。

 本の構成は、第1部から第3部の構成で、スロー・リーディングの基礎編、テクニック編、実践編と分かれています。

 前半、特に第1部があまりおもしろくないのは、やはり売れそうなネーミングに振り回されていることが原因ではないかと、私は推測しています。スローフード、スローライフなどが流行っているから、読書もスローリーディング、と名付けて、アイキャッチにしたものの、新しい名前に伴う新しい中身があるのかと思えば、そうでもないようなのです。

 私たちが昔から馴染んでいる熟読とスロー・リーディングがどう違うかが、きちんと納得できる説明がされていれば違った印象を受けたかもしれませんが、実際のところは、名前を流行りに合わせて本を売れやすくしてみました、という感じがしてしまいます。

 加えて、昨今もてはやされている速読と比較しているのも、的を射た印象を受けません。限られた時間内で、得られる最大限の情報を集めたいときに使う速読と、自分の楽しみや豊かさを追求するための読書を単純に比較することは、家族と過ごす週末に囲む食卓と、トラブルが発生してしまった仕事中に手早く栄養補給したいときの食べ物を比べているように見えるのです。

 ただ、後半部分は、かなり趣が違います。具体的な作品の一部を例に、著者がどう読むか、あるいは著者自身が作品を書く際にどういう視点を意識したか、などがわかり、とても興味深く読めました。

 この本を読まなければ、読みたいとさえ思わなかった本が例として挙げられていたこと。そういう見方もあるのかと、他人の視点と自分の視点を比較できたこと。作品を書き上げるということは、こういう細かいところまで気を配ることでもあると認識できたこと。そういう点をトータルに考えると、全部を読み終わった後としては、やはり読んでよかったと思う本でした。

 時間の惜しい方は、第2部と第3部だけ読まれてもいいかと思います。
posted by 作楽 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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