2016年06月09日

「地球の中心までトンネルを掘る」

20160609「地球の中心までトンネルを掘る」.png

ケヴィン・ウィルソン (Kevin Wilson) 著
芹澤 恵 訳
東京創元社 出版

 以下が収められている短篇集です。

−替え玉
−発火点
−今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き
−ツルの舞う家
−モータルコンバット
−地球の中心までトンネルを掘る
−弾丸マクシミリアン
−女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)
−ゴー・ファイト・ウィン
−あれやこれや博物館
−ワースト・ケース・シナリオ株式会社

 揃いもそろってみな、現実味の薄い設定でありながら、描かれている心情としては、部分的に強く共感したり、納得できたりする作品ばかりです。

 たとえば、「地球の中心までトンネルを掘る」では、3人の若者が身近な道具でどんどんトンネルを掘るのですが、実際そんなことはできそうにありません。でも、その3人の若者が、それぞれカナダ史で、ジェンダー学で、モールス信号の研究で学位を修めたものの、社会に出て経済的に自立するために必要なことは学んでこなかった事実に大学を卒業して初めて気づき、自分自身をもてあます心情には寄り添えます。また、教育機関と社会生活が乖離している不条理さも理解できます。

 こういう滑稽な状況設定とリアルな心理描写は、終始現在形で語られる文体と妙にマッチしていて、独特の臨場感が感じられ、楽しめました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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