2017年04月18日

「すべての見えない光」

20170418「すべての見えない光」.png

アンソニー・ドーア (Anthony Doerr) 著
藤井 光 訳
新潮社 出版

 2015年ピューリッツァー賞フィクション部門受賞作品(原題:All the Light We Cannot See)。

 簡潔な文章の描写が的確で、その場面や人物が映像のように浮かびあがるだけではなく、声の質まで感じられるほどでした。第二次世界大戦を背景に、ドイツ生まれの男の子とフランス生まれの女の子の人生がそれぞれに描かれています。

 精巧をきわめた作品だと感じられた理由は、いくつかありますが、そのひとつは、ジグソーパズルのピースひとつひとつが最適な大きさに切りわけられ、最適な順序で差しだされたように感じたことです。

 この作品の男の子と女の子のように主要登場人物がふたりいる場合、それぞれの登場場面が交互に、ある程度時系列に沿って語られるのがよくあるパターンですが、この作品は違います。途中から第三の人物の視点が加わったり、時系列の流れが不規則だったりします。読者は、場面が切り替わるたび、鍵となることばを頼りに、そのピースがどのピースに続いているのか、誰の視点で語られているのか、一定以上の注意を払って読むことになります。ジグソーパズルをつなぎあわせていくそのプロセスが、500ページという長さを感じさせない要因のひとつに思われます。

 ほかにも、スケールの異なる問題が、それぞれ読者との距離を保ちつつ、収まるべきところにピースとして収まっている印象を受けました。

 ひとりの男の子の気持ちも、戦争といった大きな課題も、そのあいだにあるさまざまな問題も、それぞれが、現実社会と同じように収まるべきところに収まり、安易な結論を声高に主張することなく、さまざまな思いを巡らす余地を読者に残しているように見えました。逆にいうと、読む者がどのピースをハイライトしてもいいように描かれていた気がします。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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