2017年09月28日

「凍った夏」

20170928「凍った夏」.png

ジム・ケリー (Jim Kelly) 著
玉木 亨 訳
東京創元社 出版

 主人公が新聞記者フィリップ・ドライデンの「水時計」「火焔の鎖」「逆さの骨」と同じシリーズです。

 少し変わったタイトルですが、もちろん夏が本当に凍ったわけではありません。大寒波に襲われ、凍るように寒い冬に31年前の夏の事件を追っています。このシリーズは、英国のあまり良くない気候がクローズアップされることが多いのですが、今回もそのパターンです。ただ、いままでと違うのは、その31年前の事件に新聞記者のドライデン自身が多少かかわっていて、子どものころ知らされなかったものの知りたいと思ったことも解き明かしていく点です。その夏の思い出も、大寒波に見舞われた冬と同じく、氷に閉じこめられたようにドライデンのなかで凍っていたのかもしれません。

 もうひとつ、これまでと違うように感じられたのは、ドライデンが、事件を追うなかで、妻のローラと重ね合わせてみてしまう人物と出会い、何か影響を受けたように見えた点です。高次脳機能障害と思われるその登場人物は、自ら昏睡状態に閉じこもっているようなローラに比べると自由に見えるものの、ローラに比べて恵まれているとは到底思えません。そんな経験のあと、ドライデンは、ローラと一緒に暮らす決断をします。もちろん、病院の全面的なサポートを受けながらですが、一大決心であることに変わりはありません。

 これまでの三作と違った印象をもった点もありましたが、忘れ去られていい事件などないのだといわんばかりに昔の事件を掘りかえしたり、気候に恵まれない英国の暗い雰囲気満載だったり、最後の最後までドライデンが謎解きに手こずったり、ドライデンシリーズらしさもあって、いままでどおり楽しめました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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