2017年11月06日

「声」

20171106「声」.png

アーナルデュル・インドリダソン 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社

湿地」や「緑衣の女」と同じエーレンデュル捜査官シリーズです。このシリーズはどの作品においても、過去のできごとを掘りさげる点と喪失感が感じられる点が共通点だと思います。この「声」では、とりわけ喪失感を強く感じました。子ども時代に大切なものを失い、それを背負って生きていく過酷さは、おとなのそれとは比べ物になりません。それなのに、次々とそういった子ども時代の受難が明らかになります。

 クリスマス直前のアイスランドの寒々とした気候とあいまって、明るい雰囲気とは縁のない作品なのですが、読み始めると止まらなくなります。

 それは、思いもしないシチュエーションで殺人事件が発生(発覚)するところから始まり、ひと息つく間もなく、次々と怪しい、つまり犯人だと疑いたくなる人物が登場し、そんな疑われるような態度や行動におよんだのはなぜかという謎が、ひとつひとつテンポよく解き明かされるからだと思います。また、怪しい人物それぞれが抱えている問題にリアリティがあり、小さなドラマが見え隠れしていて、眼を離せないのかもしれません。そして何より、割り切れない、グレーの部分が残されているために、事件の現実味が増すのだと思います。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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