2019年01月30日

「女も、不況?」

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酒井 順子 著
講談社 出版

 著書「負け犬の遠吠え」で自身を含む『30 代、独身、子どもなしの女性』を『負け犬』と呼んだ方なので、ひとの感情を読みとることに長けていて、なるほどと思える点が見つかりました。

 そこまで時代は変わったのか……と思ったのは『トロフィー・ハズバンド』。妙齢女性が若い男の子と結婚する姿を見て、甘え上手と甘えさせ上手の釣り合いはしっかり取れていて、うまくいく組み合わせかもしれないと評しています。『トロフィー・ワイフ』の逆バージョンがいよいよ定着するのかもしれません。

 あとは、直視しづらい心の動きについて 2 点。ひとつは『食にこだわるお店』。こだわりのコーヒー店やこだわりの蕎麦店を見て著者は、次のように解釈しています。

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IT とかグローバルとかイノベーションとか、何だかやたらと複雑な世の中において、ひたすらコーヒー豆を選り分けるとか、蕎麦を均等に延ばすとか、小麦粉を練るといった「作業」に、彼等は救いを求めるのではないか。自分の肉体と味覚だけで勝負ができる仕事に、安寧の地を見ているのではないかと思うのです。
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 大きな価値を生みだす何かが目に見えないものに移行していき、個人の役割に格差が広がる現代、著者の解釈はもっともだと思います。

 もうひとつはややこれに似た反応で、リーマンショックの時期に見られた『外資系金融企業の危機を見てウキウキした』人たちの反応です。莫大な利益を生みだしていた金融企業とそのなかで贅沢を謳歌していた従業員の転落を著者は『他人の不幸は蜜の味』と捉えています。(その感覚は日本固有のものではなく、ドイツ語にも『シャーデンフロイデ』という似た表現があると著者は紹介し、ウキウキした人たちを否定していません。)

 転落前の金融企業に本当にそれほどの経済的価値があったか見えづらかったことが、この転落にウキウキした人を多く生みだしたような気がしてなりません。目に見えないものの価値が急速に伸びていくこの時代の変化についていく大変さをあらためて感じました。
posted by 作楽 at 06:00| Comment(0) | 和書(エッセイ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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