2007年07月03日

「マネーロンダリング」

20070703[MoneyLaundering].jpg

橘 玲 著
幻冬舎 出版

 「マネーロンダリング―汚れたお金がキレイになるカラクリ」で、資金洗浄の手口があまりわからなかったという消化不良から、今度は、小説を読んでみました。

 小説の場合、あくまでフィクションです、と宣言してしまえば、どんな不正な手口が書かれていても問題ないはずなので、かなりリアリティのあることが書かれていると予想していましたが、その予想は裏切られませんでした。

 実際、こういう方法で資金洗浄できそうだと思われる箇所が随所に出てきて、参考になります。

 また、この本を読み始めたときはマネーロンダリングの手法を知ることだけが目的だったのに、税金について色々考えるようになりました。

 この本の主人公は香港在住で、香港の金融機関にコネクションがあることを利用し、日本に表立っておいておけないお金を香港に逃がすための口座を開設するのを手伝ったりしています。たとえば、会社を倒産させたいと思っていながら、社長が財産を債務に充てたくない場合など、倒産前に香港の銀行にお金を預け、その関係書類を香港の少し怪しい私書箱サービスに送らせるようにしておけば、その財産は債権者に気付かれず、当然持っていかれることはありません。

 その工藤秋生という金融業界の少々汚い裏側も知っている主人公が、資産運用について尋ねられたとき、こう答えていることが印象的でした。

 「資産運用をしないことと、税金を払わないこと」

 日本に生まれ育ち、ずっと会社員として生活していると、税金は払うものと思っている人のほうが多いのではないでしょうか。少なくとも私はそうです。税金を払うかどうかの選択を考えたこともありません。しかし、この小説によると、税金を支払わずにすむ方法がかなりありそうです。

 世界には、まったく税金をとらない、あるいは圧倒的に少ない税金しか徴収しない国があります。それらは、タックスヘイヴンと呼ばれています。そのタックスヘイヴン国について、主人公はこう説明しています。

 「タックスヘイヴン国には所得税も法人税も資産課税も相続税もない。したがって、そもそも脱税という概念が存在しない。他の国が、脱税を犯罪とみなすのはその国の勝手。自分たちの国にはそんな犯罪はないのだから、預金者が国家に税金を払わないのは、彼らにとっては合法的な行為ということになる。」

 つまり、タックスヘイヴン国にとって、テロや麻薬や人身売買などに関わっているお金の洗浄に手を貸すのは問題だが、自国の税金を逃れているお金は汚れていないと考えているというのです。本当にすべてのタックスヘイヴン国の金融機関がそう考えているかは確かめようがありませんが、かなり衝撃的な考え方です。

 しかし、ある程度の資産を持っている人が、タックスヘイヴン国に資産を移している現実を考えると、その通りだと納得せざるを得ません。タックスヘイヴンの金融機関にとっては、富裕層は大切なクライアントなわけです。しかし、そうなると、資金を移されてしまった国は課税することができなくなります。

 具体的に日本で考えると、日本は多額の負債を抱え、これからどんどん課税する方向に進んでいます。でも、その課税先はたぶん、富裕層ではなく、大した資産もないような源泉徴収される会社員に限られてくるのではないでしょうか。富裕層の資産は、タックスヘイヴンに流入し、日本国の手の届かないところにあるわけですから。

 勝ち組や負け組などという言葉が流行っていても、実はあまり実感がなかったのですが、負け組に含まれる私などは、このままでいいのだろうかと考えさせられてしまいました。
posted by 作楽 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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