2007年07月06日

「シンセミア」

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阿部 和重 著
朝日新聞社 出版

 久々の長編で、読みきれるかと少し不安だったのですが、ぐいぐいとひっぱられていきました。登場人物が多く複雑に絡み合い、時代も戦後から現代まで長期にわたっているため、一気に読まなければわからなくなってしまうというのも一因だと思います。また、ミステリを読むときには必ず思ってしまう「犯人を知りたい」とか「動機が何か知りたい」いう気持ちもありました。

 でも、やはりこれだけひっぱられるのは、作品の力も大きいと思いますが、どこがどういいのか、正直よくわかりませんし、どちらかというと好きな作品ではありません。

 それでも、この作品のどこがいいのか考えてみました。ひとつは、ありきたりの表現になりますが、構成力ではないでしょうか。これだけの登場人物や事件を破綻なく展開させることができるのですから、構成力がないはずがありません。また、人物、できごと、そして何よりも産業界の構造や地域という集団の異常さが現代の縮図のようであり、見たくないと思う一方で見たいという欲求が起こるのではないかと、推測しています。

 一方、好きになれない点は、自分でよくわかります。第一に、異常な人しか登場しないといっても過言でないくらい、感情移入できる人が登場しません。

 男性登場人物は、日常的に暴力をふるったり、盗撮やストーカー行為にのめりこんだり、悪事に目をつむって強い立場のものに対してへらへらしていたり、両極端に偏った人物ばかりです。一方、女性は、くだらない男と付き合うためにその男の異常な要求に応えたり、冷静さに欠け感情のみに走ったり、女性にありがちな一面だけを誇張し過ぎていて、人としての複雑さを持ち合わせません。

 その上、著者の「読者にわかりやすくわかりやすく」という表現方法が少し物足りないのです。文字を太くしたり、大きくしたり、ここで「あ!?」と思わなければ、犯人はわかりませんよ、と言いたげな伝え方に不満を感じました。読者に色々推測する余地を残し、もう少し楽しませて欲しかったのです。

 とはいうものの、これだけ一気に読めたのですから、充分楽しめた作品であることも事実です。また、この作品が評価されたからこそ、フランス語や英語への翻訳が進められているのでしょう。

 好きではないけど、先を読みたくなってしまうという不思議な作品でした。
posted by 作楽 at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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