2020年01月16日

「無から生まれた世界の秘密 宇宙のエネルギーはなぜ一定なのか」

20200116「無から生まれた世界の秘密」.png

P. アトキンス (Peter Atokins) 著
渡辺 正 訳
東京化学同人 出版

 物理学も数学も苦手なわたしがこの本を最後まで読めたのは、『数式はみな本文から落とし、巻末の注記に押しこめ』るという方針のもと、言葉 (だけ) で自然界の法則が説明されていたからです。物理学関連の書籍はどれを読んでも数式を理解できずに前に進めなくなっていたので、助かりました。また、擬人化された説明も読みやすく感じられました。

 たとえば、宇宙誕生の際、わずかなこと (not much) が宇宙を生み、造物主 (神) のようなものは、手抜き (怠慢、サボり indolence) をし、同時にアナーキー (無政府状態、無秩序 anarchy) も大きな要因となり、不可知 (知りようのないこと、無知 ignorance) が手助けしたと著者は考えています。

 キーワードが『わずか』『手抜き』『アナーキー』『不可知』だとわかりますが、相互の関係は漠然としてよくわからない説明です。そこを著者は、さまざまな理論・原則を紐解きながら、本書の終わりには読者がそのとおりかもしれないと感じるようなところまで持っていきます。

 ひとつ例をあげると、光の反射の法則や屈折の法則などはどれも、『光は、出発点から終点まで最速で着ける経路をたどる』と言い換えることができるそうです。

 光の動きに先述の『アナーキー』を当てはめ、光が出発点から終点まで無秩序に (勝手気ままに) 動いたと仮定します。そうすると、電磁波である光は、それぞれ別ルートで届いたとき電場が互いに打ち消しあう結果になりますが、例外的に打ち消しあわないのが、最短ルートをとった光だというのです。これを著者は、『アナーキー』がこの『光は、出発点から終点まで最速で着ける経路をたどる』という法則を生んだのだと述べています。

 こうして多種多様な法則を例に、『わずか』『手抜き』『アナーキー』『不可知』に触れていくと、著者の理論の核が薄っすらと見えてきたような気がしたのが不思議でした。
posted by 作楽 at 20:00| Comment(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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