2020年07月29日

「星に仄めかされて」

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多和田 葉子 著
講談社 出版

 この「星に仄めかされて」は、「地球にちりばめられて」から始まる 3 部作の 2 作目です。スタイルは、前作から継承されていて、登場人物それぞれの視点で語られます。

「地球にちりばめられて」の最後で、Hiruko は、自分と同じ母語をもつ Susanoo と漸く会えたと思ったのもつかの間、彼がひと言も発しないことから、失語症ではないかと疑い、その治療のために医師のもとに連れて行くことになりました。その医師は以前、クヌートと天文言語学のゼミで一緒だったベルマーです。

 本作の『第 2 章 ベルマーは語る』で、中年男性のベルマーは、自身のことをこう語っています。『自分がみんなに嫌われているなど考えてみたこともなかった。「自分」という名前の楽しい闇の中で生きていた。どこが壁なのか分からないので、狭いと感じることがない。自分というものの輪郭は見えない。自分のいる空間全部が自分だから無理もない。』

 いわゆるジコチュウの心のなかは、まさしくこんな感じなのだろうと思いました。その納得感は、ジグソーパズルのピースがぴたりとはまったときと似ています。なんとなく探していたけれど、どういう色か形か触感か、はっきりとは知らず、目の前に差し出されたとき初めて、間違いないと確信をもてたような感じです。

 多和田作品を読んでいると、なんとなくわかっていたけれど、ことばにしてあらわすとこうなるのか! と、初めてわかったような文に巡り合います。その感覚をまた味わいたくて、ときどき多和田作品を読みたくなってしまうのかもしれません。
posted by 作楽 at 00:00| Comment(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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