2008年02月01日

「播磨灘物語〈1〉〈2〉〈3〉〈4〉」

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司馬 遼太郎 著
講談社 出版

 ロシア語通訳の第一人者だった米原万里氏が、「打ちのめされるようなすごい本」の中で書かれていました。日本の教科書は全然おもしろくない。ロシアの教科書はおもしろかったから、年度初めに教科書をもらったら自分でどんどん読み進めてしまった、ということでした。

 そういわれると、日本の場合、学習は暗記主義で、深く掘り下げた内容の教科書というのはないように思います。冗長に見えても、事件や人の背景や関係が説明されているほうが、興味も湧き、教科書が分厚くなってしまっても意外に読めてしまうのではないか、と思えます。少なくとも私の感覚では、ひとつひとつを覚えるより、複数の相互関係をひもときながら考えたことが結果的に記憶に結びつくし、楽しく勉強できる気がします。

 そう思ったきっかけは、意外にもこの「播磨灘物語」に興味を持て、4冊も読み終えることができたからです。もし、こんな本を高校生のときに読んでいたら、日本史の授業がもう少しおもしろいと思えたと思うのです。

 「播磨灘物語」には、豊臣秀吉政権樹立にもっとも貢献したといわれる黒田官兵衛孝高という人物の一生が描かれています。播磨灘は、今の兵庫県のあたりで、黒田官兵衛が治めていた土地がある場所です。そこは、私の出身地に近く、むかし周辺で城があった場所などは現代でもそこそこの規模の街になっているため、土地勘があればなおおもしろく読めると勧められて、読みました。たしかに、そのとおりでした。

 その上、物語自体もとても興味深い点がいくつもあり、楽しめました。残された文献に対する説明のわかりやすさや、歴史上有名な人物の内面に対する考察も優れていて、飽きることがありませんでした。

 特に私の印象に残っていることのひとつは、戦乱の世のすさまじさ。もうひとつは、ひとの運というかめぐり合わせです。

 戦乱時代を思うと、国民の生命と安全を保障してくれる現代の国家のよさを感じずにはいられません。互いの領主が腹をさぐりあい、人質を交換し、生き残りをかけて今後の勢力を慎重によみ、誰と同盟関係を結ぶのか決めていかなければ、あっという間に滅亡してしまう危機感。それをここまでリアルに感じたことはありませんでした。日本人の国民性はこういう過去からも強く影響を受けているような気もします。

 もうひとつは、豊臣秀吉に仕え、天下をとってもおかしくないと秀吉に評価されたほど秀でていた官兵衛ですが、秀吉からも警戒され隠居の身になります。若いころ、官兵衛自身がその智恵を過信し、厳しい時期を過ごしたことも合わせて考えると、智恵に恵まれるというのも、よいことなのか悪いことなのか、わからなくなってしまいます。また、官兵衛は天下をとるという野望を密かに持っていましたが、その時機がきたと思われても、結局現実にすることはできませんでした。この本を読んでいると「もし関が原の合戦が長引いていれば」官兵衛の天下も可能性はあったと思えるのです。そう考えると、誰がなににめぐり合うかによって、歴史も大きく変わってくることを思え、偶然や必然について考えてしまいます。

 若い頃勉強が苦手だった私は、歴史を知らなくても生きていくには困らない、などと考えていました。でも、こうして実際に知る機会ができると、歴史を知っていると現代を生きるうえでの視点が豊かになることを実感できました。
posted by 作楽 at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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