2008年05月12日

「世界の歴史〈第1〉古代文明の発見」

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貝塚 茂樹 責任編集
中央公論社 出版

 「やがて哀しき外国語」に、村上春樹氏が学生だったころ、「世界の歴史」がおもしろくて読んでいたと書かれてありました。歴史の科目の勉強はその知識をもとに、年代を覚えたくらいだったそうです。私にとって歴史という科目は、大昔のどうでもいいことばかりをゆっくり習って、近代になると時間切れになってしまい、駆け足でとりあえず教科書を読む、というイメージがあります。そのためかどうかわかりませんが、歴史の本がおもしろい、というのが私にはピンとこなくて、好奇心から、読んでみようかな、という気になりました。実際に読んでみると、そんなにつまらないものでもないです。少なくとも私が昔学んだ教科書よりは、ずっとずっとおもしろいです。

 細かい年代にはあまり触れず、その時代の人々の暮らしを想像してみたり、遺跡を発掘した人たちの心情を考えてみたり「へぇ」と単純に感心してしまいます。

 たとえば、必ず教科書に出てくる秦の始皇帝(在位:紀元前246年〜210年)の「焚書坑儒」。なんとも思い切った方法で思想統一を試みたことは有名です。でも、少し子どもじみた出来事がきっかけにあったようです。
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 また始皇帝に「蓬莱山探検」をすすめた方士たちのなかには、山東半島方面の儒者が多かった。かれらのなかの二人は、仙薬入手に失敗したので、帝にとりいることを断念し、儒者としての立場から専制主義の暴君である始皇帝の悪口を、思うぞんぶん言いちらした。烈火のごとく怒った皇帝はただちにかれらをとらえて追及すると、気の弱い学者のこととて自分たちの仲間の儒者の名をペラペラとしゃべったので、四六〇人の名があがった。始皇帝はかれらをとらえ、穴を掘って生き埋めにした。これが始皇帝の思想弾圧として後世から非難されている「焚書坑儒」のうちの「坑儒」であるが、動機からみると本来は思想弾圧が目的ではなかったのである。
 しかし「焚書」の方は明白に思想弾圧であった。
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 あと、私が勘違いしていたことがわかったのは、万里の長城。始皇帝が建造させたものだと思っていたのですが、現在の万里の長城はずっと後世につくられたものだそうです。始皇帝時代は、現在の万里の長城よりずっと北側にあり、馬が越えられない程度の高さしかなかったのです。それでも、全長が青森から広島までの距離より長かったので、壮大なものだったと思います。

 もっと西側の歴史でおもしろかったのは、インド西北のインダス川周辺に栄えたモヘンジョ・ダロ。その都市計画の発達ぶりには驚きます。
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 なぜこうした整然たる街路がつくられたかといえば、かなりすすんだ都市計画のもとにつくりあげられたと考えるほかはない。
 この街路と家屋について、もう一つひじょうに重要なことは、排水跡がついていることである。それぞれの家からは雨水と汚水をいったん汚水うけ場に流し、そこで汚物を沈殿させて、街路に設けられている排水路に流し込む。街路の両側には三○センチ幅の排水路があり、やはり煉瓦でつくられ、漆喰でしっかりとかためられている。この排水路はこれまで世界各地で発掘されたもののなかで、もっともすぐれたものである。
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 現代においても、水溜りのような小さな池に飲み水を頼っている先進途上国があることを思えば、排水まで整備されていることは、すごいことだと思います。

 現代との比較でもうひとつおもしろいと思ったのは、ハンムラビ法典。世界最古の成文法として、名前を覚えさせられた記憶があるのですが、その内容が意外にも多岐にわたっていて、驚きました。詳しく例が挙げられているのですが、私が興味を覚えたのは非嫡出子の扱いの部分です。
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「もし人が、彼の配偶者が子供を彼(のため)に産み、(さらに)彼の奴隷も子供を彼(のため)に産んだ場合、父が彼の存命中に、奴婢が彼(のため)に産んだ子供にたいして『(お前たちは)私の子供である』といい、配偶者の子供にかれらをかぞえたならば、父が運命におもむいた(=死んだ)後は、父の家の財産のうちから、配偶者の子供と奴婢の子供は平等に分割し、相続人たる配偶者の子は、分前のうちから(まず)選択して取るべきである」(一七〇条)
 日本の現行の民法では「嫡出でない直系卑属の相続分は、嫡出である直系卑属の相続分の二分の一とし・・・・・・」(民法第九〇〇条四)となっている。日本の妾の子は三七〇〇年前のバビロニアの奴隷の子がうらやましいであろう。
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 こういうことを学校で教えてもらったら、私も歴史が好きになれたかもしれません。
posted by 作楽 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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