2008年06月06日

「中年前夜」

20080606[ChunenZenya].jpg

甘糟 りり子 著
小学館 出版

 正直、読後感がよくなかったです。うまく表現できませんが、たとえれば、問題を提起されただけで解決案が提示されていないよう印象を受けました。出口のない焦燥感だけ伝わってきて、その先がチョンと切れているような感じです。

 タイトルにある「中年前夜」。いつから中年というかは考え方次第ですが、この本では、40歳を過ぎたあたりからが想定されています。主人公はみんな、その年代にある女性。ひとりは、整形外科病院に勤め、院長と不倫関係にある夕子。ひとりは、出版編集でヌード写真を担当している独身の蘭子。最後は、専業主婦で夫とはセックスレスにある真澄。

 夕子は、このままひとりで不安な夜を過ごすのか、寂しい週末を過ごすのか、公然の秘密として愛人であることが知られている職場で働き続けるのか、と悩み、なんとか結婚しようとあせります。蘭子は、仕事に夢中になってきたとはいえ、このまま結婚せずにいていいのかと思いながらも、新しい恋を始める一歩を踏み出せずにいます。真澄は、家事を頑張っているつもりでも家族から感謝もされず、夫からも女性としてみてもらえず、このまま女でなくなっていくのか、と空しく感じています。

 それぞれ立場も違えば、悩みも違うけれど、料理教室で知り合った3人は次第に距離を縮め、ほかの人にはいいづらい部分を打ち明け合う仲になります。そして、中年の先として描かれるその料理教室の先生は、真っ白の髪を染めることもしない年配女性。不思議な色気を漂わせていて、3人の気になる存在です。

 この先生、なんとなく魅力的で、中年前夜の3人の延長のように描かれていたのなら、きっと読後感が明るくなったと思います。でも、実際は、3人とは別世界かのような隔たった感覚で描かれています。3人には、料理教室の先生のような淡々としたおとなの雰囲気がなく、かなり生々しいセックスの悩みを吐露しています。読んでいるほうのわたしは、押しつぶされそうな気分でした。たぶん、意味もなく、中年になっても若い頃の価値基準をひきずっているようで、おとなの良さ(時間を経た落ち着きや思いやりみたいな部分)が、わたしには見つけられなかったからだと思います。

 若さの時代の次には、誰にも中年が訪れます。そういう、ひとにとって例外のないテーマだけに、もう少し共感できるかと思ったのですが、中年を迎える不安や絶望感の部分はともかく、ぎらぎらとした性描写は疲れました。
posted by 作楽 at 00:22| Comment(0) | TrackBack(1) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Tracked: 2008-06-06 15:21