2019年12月27日

「星宙の飛行士 宇宙飛行士が語る宇宙の絶景と夢」

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油井 亀美也/林 公代 著
実務教育出版 出版

 いままで想像したこともなかった光景が次々と登場して圧倒されたことと油井氏の人柄が印象に残りました。

 宇宙飛行士である油井氏は、人工衛星が撮る写真とは違う、人間がいるからこそ撮ることができる写真を撮るという意図のもと、地球の夜景など構図に工夫を凝らした写真を数万点も撮影されました。そのなかから厳選された 91 点の画像がこの本に収められているのですが、撮影の苦労が実感できたのは、油井氏が宇宙で滞在していた ISS (国際宇宙ステーション) が秒速 8km 、東京と大阪の間を 1 分間で移動できるスピードで移動している点です。

 猛スピードで流れていく風景に合わせて手持ちのカメラも移動させるのは至難の業だったことでしょう。そうして流し撮りされた写真のなかには、歴史を感じさせるものもあります。ドイツ・ベルリンの夜景では、街明かりの色が半分ずつ異なっています。東西分裂時代に西と東で使っていた街灯がそれぞれガス灯とナトリウム灯と違う種類だったため、その夜景から今も分断時代を伺うことができます。

 そのほか、上空から見る台風の目、日本実験棟『きぼう』が青く染まって見える夜明け (ISS では 45分に 1回夜明けを迎えます)、オーロラのある景色に月光が映りこんだ幻想的な光景など、地上からの景色しか知らないわたしにとっては不思議な写真ばかりです。

 また油井氏は、YouTube でユニークな映像を公開していて、この本に掲載されている QR コードから簡単にアクセスできます。わたしがちょっと笑ってしまったのは、宇宙でピーナッツを食べる方法です。

 束の間、宇宙旅行の気分を味わうことができました。
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2019年12月26日

「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」

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中野 剛志 著
ベストセラーズ 出版

 にわかには信じがたい理論が披露されていますが、素人判断ながら理論的に破綻しているようには見えませんでした。

 著者はまず『合成の誤謬』という概念を紹介しています。これは、ミクロ (個々の企業や個人) の視点では正しい行動も、その行動を集計したマクロ (経済全体) の世界では、反対の結果をもたらしてしまうようなことを指しています。

 デフレ下で支出を切り詰めて楽になろうとしたら、それがさらなる需要縮小を招き、デフレが続いて、生活がますます苦しくなるデフレも『合成の誤謬』のひとつだということです。

 言い換えれば、赤字の垂れ流しを止めるのは個々の家計では正しいのですが、財政赤字を削減しようとすることは負の結果を招くということです。でも、日本国債を発行し続けるような状況でいいのでしょうか。それに対し著者はこう語っています。
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財政赤字の制約となるのは、民間部門の貯蓄ではない (財政赤字は、それと同額の民間貯蓄を創出するから)。
財政赤字の制約となるのは、政府の返済能力でもない (政府には、通貨発行権があるから)。
財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率である。インフレになり過ぎたら、財政赤字を拡大してはいけない。
財政赤字を無限に拡大できない理由は、そんなことをすると、ハイパーインフレになってしまうからである。
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 こう言われると、通貨とは何かがわからなくなります。著者は、信用貨幣論によれば、貨幣には現金貨幣と預金貨幣があり、後者の場合、預金が先にあって、貸出しが行なわれるのではなく、貸出しが先にあって、預金が生まれる、つまり、国債発行によって預金が増えて貨幣供給量が拡大し、それが需要の拡大を意味するというのです。

 しかし、肝心なことは、一般大衆のマインドではないでしょうか。そういう理屈を国民の多くが理解しなければ、この理論の正しさを試すことは叶わないような気がしました。
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2019年12月25日

「あたりまえなことばかり」

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池田 晶子 著
トランスビュー 出版

 哲学者が書いた本です。哲学と聞くと、自分には理解できないと構えてしまうのが常ですが、難しいことばが何ひとつ登場しないこの本は、肩の力を抜いて読むことができました。

 著者は、哲学とは『考えること』だと言っています。哲学者の本だとか学校の先生の言うことに頼るのではなく、手ぶらで零から『不思議』について考えるべきで、それが哲学だと主張しています。

 そしてその哲学の原点は、無知の知を自覚することだと言います。ソクラテスのことばを引用した説明によると『考えても何の得にもならない。しかしわからないことをわかろうとして考え始めて、如何にわからないかということをはっきりとわかることができる』そうです。これをソクラテスは、無知の知と呼びました。

 そして時には、わからない、理解できないと知ることが、それだけで十分な癒しになり得ると著者は考えています。たとえば人生です。その形式、生まれてから死ぬまで生きているという形式は、単純明快であるいっぽう、心であるところの人生、その複雑な動きをそれとして理解することは、複雑で難しいので、その事実を知るだけでも救いとなるかもしれないと著者は考えています。

 もうひとつ印象に残ったのは、心がどういったものかという考え方です。心とは、一般的にはわたしのなかにあるとされていますが、心のなかにわたしがあるという考えることもできるというのです。これはユングも行き着いた壮大な逆説だと著者は紹介しています。そう考えると、宇宙論的な奥深さのうちに心を認めることができ、心を理解できない事実を受け止めやすくなる気はします。

 考えもせずに、世の中なんにでも答えがあると思う自分より、考えて考えて、理解できないと知る自分でありたいと思いました。

 著者は、「なぜ生きるのか」という問いに「存在するから」と答えるそうです。「なぜ存在するのか」となお問われたら「さあ」と言うしかないと書いています。わたしもわたしなりの「さあ」に辿りつきたいと思います。
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2019年11月02日

「人生を変える 記録の力」

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DaiGo 著
実務教育出版 出版

 記録手法が 33 種類も掲載され、抱える問題に合わせて手法を選べるのはもちろん、実証データが豊富なテクニックばかりだという点が高く評価できます。

 わたしが一番に試したいと思ったのは『心理対比セッティング』です。ある研究によれば、ゴールを達成する確率が 2〜3 倍も高くなったそうです。書くのは、たった 4 点だけです。『いまの目標』『その目標が重要な理由』『目標達成の障害』『その目標にどう対処するか?』です。

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 自分で自分にコミットする効果があるというのもあるかもしれませんが、個々別々に見舞われる障害に対し、まとめて対策を練って自分に言い訳できないようにできる効果があるのではないかと思います。機会があれば、試したいと思います。

 なかには、わたし自身が試したいとも思わなくとも、テクニックの基礎となっている事実に驚かされたケースもありました。それは『感情表現ノート』という手法で説明されています。毎日の暮らしで新鮮に思った感情表現や単語をノートに記録するというものです。

 なぜ感情表現を集めるのか。それは『感情の粒度』が細かい人ほどストレスに強く、人生の満足度も高いことが研究結果から読み取れるからです。馴染みのない用語ですが、この『感情の粒度』とは、ノースイースタン大学のリサ・フェルドマン・バレット博士が提唱する概念で、自分の感情をどこまで詳しく表現できるかという能力を指すそうです。

 ざっくりとまとめてしまうと、感情を詳しく表現できるようになれば、人生の満足度も上がるというわけです。何か大きな結果を出さずとも、人生の満足度が上がるなら、人にもおすすめできる手法だと思います。
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2019年11月01日

「本物のチーズをめぐる冒険 チーズケーキ屋が考える日本の酪農」

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國武 建明 著
文芸社 出版

 学校給食では欠かさず牛乳を飲んでいましたが、その牛乳のことを何も知らなかったと驚かされました。

 著者は、埼玉県でチーズケーキ専門店を経営しています。この本には、無添加で美味しいチーズケーキを作るため、本当に美味しいチーズを探そうと思い立ったところから、本当に美味しいチーズを作るための美味しい牛乳に辿りつくまでの過程が書かれています。

 牛乳には『高温殺菌牛乳』と『低温殺菌牛乳』があり、高温だと悪い菌だけでなく良い菌も死ぬいっぽう、低温だと悪い菌は死んでも良い菌は残ります。つまり質を求めるならば、低温殺菌牛乳のほうがいいわけです。これを読むと、こんどから低温殺菌の牛乳を買おうと思いますが、もうひとつ問題があります。

 それは『ホモジナイズド (ホモ) 牛乳』とそうではない『ノンホモジナイズド (ノンホモ) 牛乳』の違いです。ホモジナイザーという機械にかけて均質化すると、牛乳を揺らしても分離することがなくなりますし、生クリームになることもなく、扱いやすくなるため、日本で一般的に手に入るのはノンホモ牛乳です。しかし、均質化することにより、飲むとおなかがごろごろする人の割合が増えます。それならノンホモ牛乳を飲みたいと思いますが、日本の現状ではよほど頑張らないと手に入りません。

 著者は、消費者がそういった牛乳の違いを知って、ノンホモで低温殺菌 (ノンホモバスチャライズド) 牛乳を欲しいという人が増えれば、日本の市場も変わり、酪農も変わるのではないかと考え、まずは消費者に牛乳のことを知ってもらうため、この本を執筆されたそうです。
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