2017年02月10日

「万年筆で極める美文字」

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青山 浩之 著
実務教育出版 出版

 わたしの親しい友人が、かなり万年筆に凝っていて、廉価なものから高価なものまで、100本とまではいかなくとも、かなりの数を揃えています。それで、タイトルの『万年筆』が目につき、万年筆の魅力を知りたくて読んだ次第です。

 コレクションしたくなるほどの魅力が万年筆のどこにあるのか知りたいという軽い気持ちだったのが、読み終えたときには、わたしも少し練習すれば、万年筆で綺麗な文字が書けるような気がしたのが、意外でした。

 本書では、『表情の豊かな文字』が書けることを万年筆の魅力としてあげています。微妙な力加減やスピードの違いによって、文字に濃淡が出て、文字に表情があらわれるというのです。説得力のある実例が添えられています。

 しかも、『美文字』を書くためのルールを絞り、簡潔に説明しているので、なんとなく実践できそうな気がしてきます。

(A) すき間均等法
 文字を書くとき、線ばかりに意識を向けてしまいますが、すき間の大きさも注意する必要があります。たとえば禾編では、線に区切られるすき間が6箇所あり、このスペースを同じにすれば、バランスがとれます。
(B) 中心線串刺し法
 文全体としてバランスをとるには、漢字とかなで大きさを変える必要がありますが、それぞれの縦の中心線を合わせると見栄えがよくなります。
(C) 手首固定法
 手首を机につけることにより、安定して一画一画を書けるようになります。

 文字を丁寧に見せるルール(ただし、楷書に限定)もあります。
(a)「ピタ」のルール
 横画の最後を筆圧を加えて「ピタ」と止めれば、整った印象になります。
(b)「カク」のルール
 折れる部分は、横画の終わりで、いったん力をゆるめてからコブができるくらいしっかり押さえて折ることで、丸く書いた角にはないメリハリがうまれます。たとえば『口』の右上の折れなどに使えます。
(c)「ピト」のルール
 つけるべきところを筆圧をかけてしっかりつけると、きちんと感がうまれます。たとえば『目』のあいだの二本をきちんと左右につけると乱暴に書いたようには見えません。

 文字ひとつひとつの書き方を覚えるのではなく、多くの漢字に当てはまる基本ルールを覚えるよう説明されているので、きれいな字を書くのはそう難しくはないように思えてきます。実際は、難しいのでしょうけれど、少し意識するだけで、かなり違う印象の文字を書けそうな気はします。
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2017年01月26日

「バルカンをフィールドワークする―ことばを訪ねて」

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中島 由美 著
大修館書店 出版

 これも「ガセネッタ&シモネッタ」を読んで、見つけた本です。実際に読んで思ったのが、「そもそも、これ、いつの本?」出版は1997年で、フィールドワークに出かけた最初の時期は1978年から1980年です。まず、時代を感じました。しかし、それが悪いというわけではありません。そういう時代だったなぁ、と感慨を覚える部分もありますし、そういう時代だったんだ、と新たな知識を得ることもあります。

 しかし、一番の醍醐味は、はるか遠い日本という国から、わざわざユーゴスラビアまでマケドニア語を研究しに来た日本人を迎えた現地の人たちとの交わりではないかと思います。この本自体は、ユーゴスラビアという多彩な民族や言語を抱える国において、言語がどのような影響を与え合ったかを地理的に解明しようという言語地理学の観点からフィールドワークを実施するというものですが、日本人にとってユーゴスラビアはあまり馴染みがない地方なので、この本を読むことによって現地の方々の文化、習慣、料理など、楽しめると思います。

 そういえば、「石の花」でも出てきたあれが、また出てきました。

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 ユーゴスラヴィアといえばその頃は例の数合わせ、「七つの国に囲まれ、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字があって、でも一つの国家」というのが自慢だった。
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 "その頃は"というのは、著者が最初に研究のためにユーゴスラビアを訪れた1978年から1980年のことです。その後、時代は移ります。

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 一九九一年マケドニアが独立を宣言すると、国名をめぐってギリシアから横槍が入った。ギリシアが問題にしているのは「マケドニア」なる名称を「他人」が使うことであり、長年我がマケドニア国を「スコピエ政府」などと呼んできた。とはいえマケドニアがユーゴスラヴィア連邦の一部である間は、表だった外交問題に発展することは稀だった。ユーゴスラヴィアの黄金期には、ギリシアでバカンスを過ごす人も多かったし、スコピエの悪友どもも何かあると車を仕立ててソルン(テッサロニキ)までショッピングに出かけていたものだ。
 いよいよ「マケドニア」が正式国名として旗揚げされると、両者の関係は一気に悪化した。アトランタ・オリンピックにも登場した「旧ユーゴスラヴィア・マケドニア共和国」という妙な国名は、国連が承認に踏み切るにあたって、ギリシアとの妥協のために考え出した苦肉の策である。片や旧連邦を引き継いだ国は「新ユーゴスラヴィア」だというのだから、ややこしい。
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 政治的に新しい国の誕生は難しそうですが、新しい言語の誕生という観点から見ると、興味深いです。著者はマケドニア語の父といわれるコネスキ氏とも直接親交があったそうで、伝聞ではないよさで解説されています。そもそも、ひとつの言語が近代において作られるというのは、あまり例のないことでしょう。そういう希少性からも、マケドニア語誕生秘話とその後の経過はなかなか興味をそそられる話に仕上がっています。

 もうひとつ興味を惹かれたのは、著者が帰国子女などではなく、日本語を母国語として生まれ育ち、大学生時代までユーゴスラビアに行ったことがないということです。実は、フィールドワークと聞いて思ったのは、子どもの頃どういうところで育った方なんだろう、ということだったからです。わたしは、おとなになってから習得した言語では、データがとれるほどには聞き取れないと思っていたのです。そのことについては、著者も説明の必要性を感じられたのか、ある程度説明されています。それでも、正直、信じられません。結局、著者の努力が桁外れだったのだろう、という結論が妥当に思われました。

 世界は広いのに、人が見られる世界は小さいものだな、と寂しさを感じてしまいましたが、こうやって本があることによって広がる世界もあるのだと再認識しました。
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2017年01月23日

「第4次産業革命で一人勝ちする日本株」

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菅下 清廣 著
実務教育出版 出版

『資産はこの黄金株で殖やしなさい』というシリーズの2017年上半期版です。12月2日に出た本で、アメリカの大統領がトランプ氏になったというニュースは盛り込まれています。

 わたしは、株式売買には馴染みがないのですが、この第4次産業には興味があり、どのような企業の名前が挙げられているのか気になり、読んでみました。前半は、第4次産業革命全般について説明があり、後半は、著者が押す株式銘柄について、個々に説明がされています。推奨銘柄は、4つにグループ分けされてあり、ローリスク・ローリターンタイプから、ハイリスク・ハイリターンタイプまで、幅広く取り揃えられています。そのため、投資に興味にある方にとっては、実践的な内容ではないでしょうか。

 わたしが興味を持っているAIが、どういうかたちで日常に入り込んでくるのか、どのような企業がリードするのか、といった類のことは細かく説明されていないのですが、第4次産業革命は、わたしが思っていた以上にスピード感をもって、進むという印象を受けました。(あくまで、政府の高い行動力を前提とした著者の予想です。)

 もし本当に、東京オリンピックの前に、かなり大きな変化が起これば、企業の明暗も分かれるのでしょう。そこがタイトルの『一人勝ち』につながってくるようです。IoTなどの変化が、本当に目前に迫っているのなら、楽しみです。
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2016年12月09日

「坐骨神経痛は99%完治する」

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酒井 慎太郎 著
幻冬舎 出版

 内容紹介で、「足がしびれる、座るのがつらい、長時間歩けない、よくこむら返りが起きる……これらすべてが、一気に解決します!」とあって、この「よくこむら返りが起きる」に該当するうえ、いままで何度か腰痛に見舞われた経験から、興味がわいたので読んでみました。

 この本に書かれてあることを短くまとめると『あまり知られていない事実として、坐骨神経痛のほとんどの原因は仙腸関節の不調にあり、仙腸関節を調えれば、痛みはなくなる』というものです。少し要約しすぎの感もありますが、これだけです。仙腸関節の治療(関節包内矯正・かんせつほうないきょうせい)をしてもらえるクリニックが周辺にあるのなら、それでこの本の役目は終わりです。

 ただ、そういったクリニックが周囲にない場合を想定して、どのようなセルフケアを施せば仙腸関節を調えられるかも、後半に記載されています。いたってシンプルなケアなので、この本を読みさえすれば実践できると思います。必要なものは硬式テニスボール3個と毎日15分ほどの時間を割く根気だけです。

 拍子抜けするようなシンプルな対処ですが、わたしの周囲に脊柱管狭窄症に悩むひとも複数いるので、教えてあげたいと思います。
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2016年12月08日

「緑のカプセルの謎」

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ジョン・ディクスン・カー (John Dickson Carr) 著
三角 和代 訳
東京創元社 出版

 1939年に発表されたミステリだとは俄かに信じがたいほど、色褪せた感じがしません。現代のデジカメには遠くおよばない、音声すら入っていない映像が重要な証拠なので、もちろん作品の古さを実感することはできます。それでも、ひとが陥りやすい錯覚を利用したトリックは、妙に説得力があります。わたしが、もしこんなふうに誘導されたら、うまうまと罠に嵌められることは間違いないと言い切れるほどです。

 見事なトリックで成り立つその事件は、ある事件のトリックを解明するために実施された実験を巧みに利用したものでした。しかし、その実験の意図がどこにあったのかも、どのようにその実験が利用されたのかも、皆目見当がつかないところから、ヒントが小出しにされていきます。そんな展開のなか、途中で読むのをやめるなんてことはできず、ついつい読んでしまいました。

 そしてすべてが明らかになり、ずいぶんと巧妙なトリックだとひとしきり感心したあと初めて、少々偶然に頼りすぎた展開があったことに気づくといったありさまで、すっかり騙されてしまいました。発表から半世紀以上経って、新訳で再登場する作品だけのことはあります。堪能いたしました。
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