2019年10月09日

「源氏姉妹 (げんじしすたあず)」

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酒井 順子 著
新潮社 出版

 源氏物語を紐解き、光源氏と関係をもったシスターズを著者の解釈を加味して比べるという企画です。物語の流れや背景を説明したあと、女性たちになりかわって著者が独白するのですが、その独白は、それぞれの個性がうまく描き分けられ、かつ現代女性にとってもわかりやすいよう語られています。

 観察眼に優れた著者の的を射た分析と好みの表明は読んでいると楽しくなります。

 戦後、男性に比べて女性の生き方は多様化してきました。専業主婦に限られず、共働きという選択肢も生まれ、働くにしても補助的な仕事はもちろん、高度に専門的な仕事に就くことも不可能ではなくなりました。

 それぞれの女性がそれぞれの生き方を模索する時代、さまざまな価値観で光源氏と交わった女性たちを見てみることは、時間という距離がある安心な場所から眺められるだけに意外と楽しいものです。

 わたしがもっとも共感を感じられなかった女性は六条御息所です。夕顔、葵上、紫上と 3 人のシスターズを怨み殺してしまったほどの気持ちを哀れに思うもののそこまでの気持ちは理解できませんでした。著者は『どれほど源氏から疎まれても憎まれても、死んだ後まで、一個の人間として生きる道を選んだ』と評しています。一個の人間として生きることは確かに大切ですが、他人の命を巻きことはまた別の問題だと思いました。

 いっぽう、恋しいと思っている相手が閨をともにするため足繁く通ってくることがなくなっても『ひがむことなくおっとりと対応し、言いつかった仕事を粛々とこなしていた』花散里には、共感できました。著者も、そんな花散里は結局のところ幸福に恵まれたと書いています。

 ほかにも源氏の父の妻にあたる藤壺宮、その藤壺宮の面影のある紫上、床上手だったのではないかといわれる夕顔、源氏が幅広い世代の女性に手を出していた証のような源典侍(げんのないしのすけ)など様々なシスターズが登場し、様々な立場の女性の気持ち窺い知ることができ、源氏物語が長年にわたって読み継がれてきた理由のようなものをあらためて知ることができた気がします。
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2019年10月08日

「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」

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佐藤 雅彦/菅 俊一 原作
高橋 秀明 画

『行動経済学』とは、有斐閣の経済辞典によると、実験などで繰り返し観察される行動様式を取り入れて経済主体の行動の公理をつくり,それを基に理論を構築する手法の経済学のことだそうです。

 行動経済学者リチャード・セイラーは、行動経済学によって得られた知見は、普段の生活の中で、非合理的な行動を起こしそうな時に、わたしたちをナッジ (nudge:注意をひくために、人を肘でそっと小突いて知らせる) ためのものになっていくべきと述べています。

 つまり、非合理的な自分たちの行動を知り非合理な判断を避けるため、行動経済学を学ぶことは有益であるというわけです。

 ただなかには、マイペースなわたしには当てはまらないと思える行動パターンが稀に紹介されていました。たとえば性格診断を使って説明されていた『バーナム効果』です。提示のされかたによってわたしたちは、実際はどんな人にでも当てはまる性格に関する記述を自分のためのものとして解釈してしまうことがあるそうです。これにより、占いなどで何に対しても『当たってる!』と思ってしまうようなことが起こります。例として用意された性格診断を読んで、わたしには当てはまらないと思ったわたしは性格に偏りがあり、バーナム効果が及ばないのかもしれません。著者が期待していない学びを得られました。

 逆に、期待されたとおりの学びがあったのが『代表制ヒューリスティック』です。わたしたちは様々な物事を見聞きしたときに、すでに抱いているイメージに囚われて偏った判断をしてしまうことがあります。その心のはたらきが『代表制ヒューリスティック』と呼ばれます。

 なぞなぞ形式で問われます。『ある教授のお父さんのひとり息子が、その教授の息子のお父さんと話をしていますが、その教授はこの会話には加わっていません。こんなことは可能でしょうか。』

 答えは『可能』です。性別が限定される単語が 2 種類出てきますが、教授の性別には触れられていません。女性なら可能なわけです。でもなんとなく男性だと想定してしまいます。それが『代表制ヒューリスティック』というわけです。自分が抱いた漠然としたイメージに悲しくなりましたが、いい勉強になりました。
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2019年10月07日

「つながりに息苦しさを感じたら読む本」

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村上 剛 著
セルバ出版 出版

 サブタイトルとして「心が 9 割ホッとするコミュニケーションスタイル」と書かれていますが、これはこの本の内容をあらわしていないと思います。

 NLP University 認定マスタートレーナーという著者の立場から推察すると、NLP のあれこれを伝えるため、この本を書かれたのでしょう。しかし残念なことに、その幅広い知識が細切れに披露されるだけで、コミュニケーションの改善に絞った適切な助言にはなっていません。

 ただその細切れの知識のなかに、納得できる点がいくつかありました。

 そのひとつが『表象システム』です。視覚優位、聴覚優位、体感覚優位にわかれ、それぞれ行動、思考、価値観などの観点から異なるそうです。この本の内容を読む限り、わたしは、聴覚優位に該当するようです。

 聴覚優位の場合、思考が論理的で思考パターンは情報の配列となり、長所は、話の筋が通っている、言語に対し厳密で定義づける傾向があるそうです。短所は、柔軟性に乏しく、コンピュータのようだとのことです。

 視覚優位の場合、思考が直感的で情報の全体な統合を得意とし、長所は、頭の回転が速く、絵画的表現に優れ、モデリングが得意ということです。短所は、話題が飛びがちで、非難が多く、憶測や歪曲も多いそうです。

 体感覚優位の場合、思考が感覚的・情緒的で、情報を現実化する傾向があり、長所は、情け深く優しく、鋭敏な身体感覚を持ち、共感性が高いところです。短所は、感情に取り込まれやすい点です。

 自分を再確認し、他者との違いを把握するのに、この『表象システム』は、役立つように思いました。ただこの差異を越えて良いコミュニケーションを取るにはどうすればいいのかという観点からの記載がなく残念でした。
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2019年08月26日

「これだっ!という『目標』を見つける本」

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ケン・シェルトン (Ken Shelton)/リチャード・H.モリタ (Richard H. Morita) 著
イーハトーヴフロンティア 出版

 前半は一般的な啓発書と同じように、自分にあった目標を見つけることが重要であるという意見が述べられています。後半は前半とは違って、小説風に自分にあった目標を見つけるきっかけに恵まれた人物が描かれています。

 あの手この手で自分にあった目標を見つけよと訴えるくらいなら、具体的なプロセスについてもっと掘り下げて欲しかったと思います。何かを理解することとそれを実践することは別で、いくら頭で理解していても実践する場では実践特有の問題が起こるものです。それについては別の本で学んでくださいというスタンスでは一冊の本として完結していないように思え、物足りなさを感じました。

 わたしの場合、家族がいないので、添付の質問シートがあまり意味をなさなかったり、手に入れたい、自由にしたい、やめたいなどと思うものがなかったりしました。自分に該当する数少ない質問に満足に答えらず、行き詰ってしまいました。

 ただ、自分の目標を見直せなかったとしても、過去を振り返り、過去を解釈しなおし、肯定的で前向きな自己認識をもち、『本当の自分』が興味を持てることを目標に設定する大切さには納得できました。いい学校に行っていい会社に就職のうえ出世するだとか、起業し収益をあげて企業規模を拡大するとか、右に倣えで自分の理想を描いても辛いだけだということがこの歳になるとわかるからです。

 この本に真の価値を見出すのは、人並み以上になろうと本当に頑張っている方々かもしれません。

 ロシュフコーは言っています。『我々は、どちらかと言えば、幸福になるためよりも、幸福だと他人に思わせるために四苦八苦しているようである。』
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2019年08月13日

「仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣」

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吉田 幸弘 著
あさ出版 出版

 もっとも目を惹く特徴は、読みやすいことです。ひと組ずつ習慣をとりあげ、タイトルと同じように仕事が早く終わる人と終わらない人で比較しています。

 42 列挙されている習慣の比較のひと組に、自信をもてずにいたものの自ら実践していた習慣が含まれていました。
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早く終わる人はマニュアル化思考、
終わらない人は結果が出ればいい思考
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 まず仕事が早く終わらない人の特徴として『仕事から学んだことがあっても、何も記録に残していないので、次に同じような仕事が入っても改善につながりません。』対照的に、早く終わる人は、『仕事から学んだことを整理して、その都度ノウハウをマニュアル化します。その結果、次回の仕事のクオリティがアップし、作業効率が上がっていきます。これが時間の短縮化につながっていきます』とあります。

 押さえるべきポイントを挙げ、次の機会に思い出せる程度に詳しく記録しておくと次の機会に重宝するいっぽう、それなりに時間がかかるうえ、次の機会が必ず巡ってくるかわかりません。そのため、この考え方に自信がもてずにいましたが、これからも続けていこうと思いました。

 そのほか、絶対こういうことはしないでおこうと思っていることも仕事が終わらない人の習慣に含まれていました。
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早く終わる人は「何を言ったのか」を重視し、
終わらない人は「誰が言ったのか」を重視する
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 いわゆる上ばかり見ている人を見て、反面教師にしたいと思っていたので、共感できました。
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早く終わる人は下の人からも学び、
終わらない人は上の人からだけ学ぶ
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 常に学び続けないと新しい技術についていけない時代なのに、自分の年齢はあがっていくばかりなので、このことも絶えず忘れずにいたいと思います。
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