2018年11月26日

「幸福論」

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B・ラッセル (Bertrand Russell) 著
堀 秀彦 訳
KADOKAWA 出版

 幸福論は数多くありますが、今回はラッセルです。章立てを見るだけで、読書の半分が終わってしまうかと思うほど、整理されています。幸福になるために取り除かなければならない不幸の原因 (第 1 部) と幸福をもたらしてくれるもの (第 2 部) は、次のとおりです。

第 1 部 不幸の原因
- 何がひとびとを不幸にさせるのか?
- バイロン風な不幸
- 競争
- 退屈と興奮
- 疲労
- 嫉妬
- 罪悪感
- 被害妄想
- 世論に対する恐怖

第 2 部 幸福をもたらすもの
- いまでも幸福は可能であるか?
- 熱意
- 愛情
- 家庭
- 仕事
- 非個人的な興味
- 努力とあきらめ
- 幸福な人間

 古典だけあって、性役割の押しつけを前提とした表現もありますが、全体において鋭い観察眼だと敬服せざるを得ない内容です。

 第 1 部で少しわかりにくかったのが、『バイロン風な不幸』です。なんのために生きるのか……この世に、生きるに値するようなものはない……そういう考えのことです。読んでいて類似していると思ったのは、現代のいわゆる『自分探し』です。そういう青年たちには、生きていくだけで精いっぱいという状況に身を置いてみるよう勧めています。時代が変わっても、生きていくこと自体が脅かされなければ、生まれる悩みなのかもしれません。

 第 2 部でわかりにくかったのが、『非個人的な興味』です。これは、仕事などの事情に関係のない、自然と内から湧きでる興味をもって楽しめる趣味のようなものを指しています。思うに『熱意』に共通する部分もあるように思います。「いっそう多くの事物に興味をもてばもつほど、それだけ幸福の機会を多くもつ」と書かれてあります。

 全体を通して感じたのは、幸福は、自らを変えて手に入れるものであり決して待っているものではないもの、自分の内面と向き合いながらも外に向かってつながりをもたなければ実現できないものだということです。じゅうぶんな説得力がありました。
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2018年11月23日

「頭がいい人、悪い人の<言い訳>術」

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樋口 裕一 著
PHP 研究所 出版

頭がいい人、悪い人の話し方」がミリオンセラーになって、この本も書かれたようです。2 冊まとめて買ってあったので、失敗しました。

 読まなくてもいいかと思っていたのですが、ある方の相手をしているとき、ふと手にしてしまいました。期日に間に合わなかったとき、いつも「体調が良くないから」か「昔ならできた」のいずれかで言い訳し、決まって問題を小さめに伝える方がいるのです。この本によるアドバイスは、次のとおりです。

 体調の言い訳には、本当に心配しているところを見せて、病院で検査を受けるよう勧めるのがいいそうです。もし仮病なら、プレッシャーを感じてこの言い訳が減ることが期待できると著者はいいます。

 昔ならできたと見栄を張る人には、あまり追及せずに、温かく見守るべきだといいます。ただ、親が子供に勉強を教える際の言い訳を想定しているので、仕事でのケースに当てはめるのは無理があると感じました。

 過少申告ですませようとする人には、情報は正確に示さないと信用を失うことを教える必要があり、たとえば 15 分遅れるといいながら 1 時間遅れてくる人の場合、15 分待って帰ってしまうといった毅然とした態度をとるよう勧めています。

 最後のケースは、参考にさせていただき、わたしにとっての面倒な人にも態度で示したいと思います。
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2018年11月16日

「不思議なハンコ屋―山本印店物語」

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山本 桃仙 著
マキノ出版 出版

 東京近郊では、とても有名なハンコ屋さんの店主が書いた本です。このハンコ屋さんが有名なのは、ここでハンコを作ると運が開けるという評判と独特な可愛い書体です。

 開運について、著者はこう語っています。
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その人の人生の流れの中で、自然に僕のハンコを持つタイミングが訪れる、ということはあるでしょう。ハンコを作ったから運勢が変わるのではなく、先に運勢の流れがそういうふうに変わってきたから僕の店にやって来るということです。ハンコが先か、運勢が先か。運勢のほうが先なのです。
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 さらに、こうもいっています。
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生まれたときの運勢に合った生き方、その人自身に見合った生き方をしていて、現在使っているハンコがそれをしっかりサポートしていると感じられるときは、ハンコを作り替える必要はありません。
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 著者は、来店予約をとった方に、いま持っているハンコを持ってくるようにいい、そのハンコから新しく作り替えるべきか判断し、不要であればハンコを作らないそうです。

 著者には何かが見えているのでしょう。そして、売上第一に考えないから、山本印店のハンコに運を開く力が備わっているように見えたのかもしれません。
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2018年11月15日

「丁寧を武器にする」

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小山 進 著
祥伝社 出版

 著者がエスコヤマというケーキ店 (カフェも併設) を開いているのは、三田市です。関西の人間は、そこに目を惹かれます。「なぜ、三田 (さんだ) ?」「三田で、どうやって日にロールケーキを 1600 本売るの?」と疑問に思うような場所なのです。

 でも、この本を読めば、納得できます。

『丁寧』と書かれてあることがどれも『当たり前』のことだからです。でもその当たり前を継続することがいかに難しいかは誰もが知っています。だからこれほどの価値がうまれたのだと納得できました。

 もちろん当たり前のことだけではありません。たとえば、『「どんな想いを伝えたいのか」を考える』ことから商品の開発を始めるといいます。『ストーリーを商品に入れ込む』ことが不可欠だというのです。

 また、『今のように「足りている時代」は人と同じことをしていたらむしろ成功はしない』とも語っています。モノが溢れ、欲しいものがない時代に合ったポリシーだと思います。

 風光明媚な三田までわざわざケーキを買いに行って、ついでにアウトドアを楽しんで帰るという日常のイベントを作りだせるパワーのある著者だと思いますが、その著者を育てたスイス菓子ハイジの前田社長という方も秀でた方だったのだと思います。
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2018年11月14日

「さよなら、そしてこんにちは」

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荻原 浩 著
光文社 出版

 以下が収められた短篇集です。

- さよなら、そしてこんにちは
- ビューティフルライフ
- スーパーマンの憂鬱
- 美獣戦隊ナイトレンジャー
- 寿し辰のいちばん長い日
- スローライフ
- 長福寺のメリークリスマス

 共通するのは、現実社会で異論が生まれることがらをユーモラスに描いている点です。

 テレビのバラエティ番組で痩せるとか、健康にいいとか放映された途端、それまで見向きもしなかった食品などに群がり、短ければ数日で忘れてしまって『もっとトクをする』情報へと移ってゆく消費者が多くなっているように思います。「スーパーマンの憂鬱」では、そんな消費者を相手に苦戦するスーパーの仕入れ担当者がちょっとした穴に落ちてしまいます。

 グルメ本で星がついた途端、それまで一度も行ったこともなければ知り合いから評判を聞いたこともない店の予約をとろうと懸命になる消費者も多いように思います。「寿し辰のいちばん長い日」では、ほんのひと握りの常連を相手に見栄を張るばかりで、売上がどん底の飲食店の店主がちょっとした穴に落ちてしまいます。

 情報過多時代の消費者の行動など、ちょっとしたブームに乗ってしまう流れに対して意見は分かれると思いますが、どちらが正しいというのではなく、これらの作品のようにちょっとした笑いでやり過ごすというのもいいと思います。少なくともわたし向きでした。
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