2016年11月18日

「A Redbird Christmas」

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Fannie Flagg 著
Vintage Classics 出版

 (アメリカの) Amazon.comでは、500件を軽く越すレビューが書かれているので、ベストセラーと呼んでもいいと思います。ただ、それらレビューの高評価には、あまり同意できません。タイトルにあるとおりクリスマスのお話なので、クリスマス・ストーリーの原則どおり「めでたし、めでたし」で終わるべきだということを頭では理解していても、ここまで幸せの大盤振る舞いになると少々興ざめしてしまいました。

 物語は、孤児として育った中年男性 Oswald が肺を患って余命宣告を受け、寒さ厳しいシカゴを出て、アラバマへと引っ越すところから始まります。新天地で、さまざまな人や生き物にであい、それまで縁のなかった居心地のいい時間を過ごし、好きなことを見つけ……と展開していきます。

 登場人物それぞれの個性が際立ち、都会では見つけづらい穏やかなコミュニティの描写も優れていて、読むのが楽しかったのですが、それでも畳みかけるようなハッピー・エンドは、好きにはなれませんでした。クリスマス・ストーリーのあるべき姿を理解できていないだけかもしれませんが、わたしの気持ちとしては、ちょっぴり残念でした。
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2016年04月28日

「Joyland」

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Stephen King 著
Hard Case Crime 出版

 21歳の男子大学生がアルバイトをしながら過ごした夏休みとそれに続く秋のできごとが描かれた作品です。失恋をしたり、一生付き合いの続く友人を得たり、その大学生の成長が描かれているだけでなく、殺人事件の謎解きや霊というスピリチュアルな世界などの要素も加わって、盛りだくさんな内容になっています。

 タイトルにある Joyland は、大学生のアルバイト先の名前です。ディズニーランドのような大型テーマパークではない、大きめの移動遊園地といった風情の夏季限定遊園地です。21歳の大学生が、時を経て老境にさしかかり、かけがえのないひと夏の思い出を振り返るスタイルで書かれている本作において、この Joyland は、古き良き時代の象徴であり、彼にとっての忘れがたい思い出の象徴でもあります。

 そして何より、もう二度と現実に行くことができない、心のなかだけで存在しつづける場所であり、それは二度と会えない人々とも重なります。切ない物語でした。
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2015年02月17日

「Skipping Christmas」

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John Grisham 著
Dell 出版

 大学を卒業した娘が2年間ペルーに行くことになったのをきっかけに、ことしはクリスマスをスキップしてしまおうと決めた夫婦の話です。

 アメリカの中流家庭がおくるクリスマスとは、いやはやこんなに手間のかかるものなのかと同情するものの、やっぱり笑ってしまいます。たとえば、クリスマス・ツリー。日本のようにプラスチック製ツリーを毎年使いまわすのではなく、おとなの身長を超える高さの木をトラックいっぱいに積みこんでボーイスカウトが各家庭を訪ねて売るようです。(もちろん保護者が付き添うわけですが。)その利益がボーイスカウトの活動費になったりするわけですから、毎年買ってくれている家庭のぶんを当てこんで木を仕入れ訪ねてきたところへ、ことしはクリスマスをスキップするからツリーは不要と言えば、やっぱり気まずくなるわけです。そのほかにも、クリスマス・プレゼント、クリスマス・カード、クリスマス・パーティ……。きわめつけは、住宅街ごとにクリスマスのライトアップを競うイベントです。ご近所さんの屋根はみなスノーマンでキラキラと飾られているのに1軒だけ真っ暗となれば……。

 しかも終盤にとんでもないハプニングが起こります。

 ジョン・グリシャムといえば、リーガル・サスペンスしか知らなかったのですが、ほのぼのハッピーエンド作品も悪くありませんでした。
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2015年01月25日

「The Kitchen God's Wife」

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Amy Tan 著
Ivy Books 出版

 タイトルにあるキッチンの神様というのは、中国の神様です。中国の神様社会には、会社のような上下関係があるようです。このキッチンの神様は結構下っ端で、日々人間の行動を観察し、1年に1度上司にあたる神様に、どの人間の行いが良いか、どの人間の行いが悪いかを報告する仕組みです。人間の立場からすれば、その報告次第で授けられる幸運が変わってくるわけですから、キッチンの神様にお供えをしないわけにはいきません。

 そんな立場のキッチンの神様は、もともと人間でした。働き者の妻のおかげで豊かな暮らしをしていたのをいいことに、愛人を家にひきいれ、その愛人が妻を追い出してしまっても、愛人と遊び呆けているような夫でした。

 そしてこの夫に尽くしながらも報われることのなかった妻がこの本のタイトルになっています。この物語の象徴のような存在だからでしょう。

 キッチンの神様の妻は、世の理不尽さの象徴でもあり、運命に翻弄される人生の象徴でもあり、強さと弱さが共存するという矛盾の象徴でもあるのでしょう。

 そう考えると、キッチンの神様の妻は、惨めとしかいいようがない感じがしますが、本当にそうなんでしょうか。逆に、キッチンの神様は、遊び呆けたうえに、幸運を得ようとする人々からお供えを受けて、楽しいのでしょうか。

 文化や時代も含めて、幸福や幸運のものさしについて、考えさせられました。
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2014年02月04日

「The Blue Nowhere」

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Jeffery Deaver 著
Pocket Books 出版

 Jeffery Deaver(ジェフリー・ディヴァー)の作品を読んだのは、これが初めてですが、その人気に納得できる内容でした。

 ミスリードにひっかかったあと意外な展開を突きつけられるということが繰り返されます。後半になると、さすがにミスリードに気づけるようになりますが、それでもやはり行きつく展開は意外で、うまうまと一気読みの罠に嵌ってしまいました。

 あるハッカーが他人のパソコンに侵入し、所有者の交友関係やスケジュールなどをいともたやすく手に入れ、その情報をもとに相手を殺害するところから一連の事件は始まります。犯人の高度なハッキング技術を見て、警察側の捜査にも優秀なハッカーを招き入れる必要性を感じた捜査員が支援を求めた先は、禁錮刑を受けている囚人でした。

 読者が驚くような設定や展開が練られているだけでなく、ハッカーたちの価値観も描かれて退屈せずに読めるようになっています。その一方で、誰が悪人であってもおかしくない設定になっているため、登場人物の個性が細かく描きこまれていません。

 また、出版が2001年と古いので、登場するパソコンやシステムも古く、若い人にはわからない可能性があります。

 しかしその頃から変わらず、わたしも含め日本人は、相対的にセキュリティ意識が甘いので、もしこんな犯人があらわれたら間違いなくありとあらゆるコンピューターが凶器に変貌させられるのだろうと、ぞっとしました。
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