2019年06月13日

「Around the World in 80 Dates」

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Jennifer Cox (ジェニファー・コックス) 著
William Heinemann 出版

「80 日間世界一周 (原作はフランス語ですが、英語だと "Around the World in 80 Days")」から、本作の 80 という数字が生まれたのは間違いないと思うのですが、それでも 80 回のブラインドデートを目的に世界を一周するというのは、いくらなんでも無謀な試みではないかと読み始めたときは思いました。

 それが読み進めるにつれ、80 回のブラインドデートを敢行すると決めた Jennifer の考え方に納得したり、共感を覚えたりすることもあり、意外にも楽しく読み切れました。

 Jennifer にとってこの 80 回のブラインドデートの旅は、ソウルメイトを見つけるためのものです。でも、会うだけで相手がソウルメイトだとわかるのか、彼女は確信がもてませんでした。それで、The Science of Love and Passion というペーパーを書いた教授を 4 番目のデートの相手に選び、自分の考えを整理したり、その後その知識を活用したりします。

 多少情報武装しているところはありますが、基本的には自分の直感を信じて行動する Jennifer に共感できたのは、幅広く人の意見に耳を傾け、でも最後はきちんと自分で決め、周囲の人たちの気持ちをおもんばかり、自分を支えてくれる人たちに感謝し、自分で正しいと思えることを行動に移す彼女の生きる姿勢のようなものです。

 ロマンス小説に分類できますが、ソウルメイトを追い求める Jennifer の成長物語ともいえる作品です。結末は、その結末しかないと思えるような終わり方で、読後感が良かったと思います。
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2018年12月20日

「PS, I Love You」

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Cecelia Ahern 著
Hachette Books 出版

 Holly は、2 か月ほど前に夫を亡くしてばかりで何をする気力も起こりません。ある日、母からの電話で実家に自分宛ての小さな包みが届いていることを知ります。もう何週間も実家で預かられている包みを開けると、亡くなった夫 Gerry からの手紙と 10 通の封書が入っていました。彼は、これから毎月 1 通ずつ手紙を読み、そのとおり従うことを求めていました。

 その日から Holly は毎月 1 日になるのを待ちわび、その月名が記された封筒を開け、Gerry がいまもそばにいると感じながらそこに書かれたことを実現しようとベストを尽くします。

 この小説では、29 歳という若さで Gerry と死に別れた Holly が夫からの最後の手紙を読むまでの月日が描かれています。ちょっとした旅行はパーティはあっても、非日常的なことは何も起こりません。でも、これまでも経験した何かを繰り返すことは、Gerry がそばにいたころの暮らしを Holly に思い出させ、彼女の内面をより多く映す役割を果たしています。

 また、それぞれ個性が違う家族や友人がいきいきと話し行動し、それぞれの価値観で彼女に接し、寄り添い、ときにはぶつかりあうなかで、彼女は少しずつ前向きになっていきます。特に、長兄の Richard との関係性の変化は読みごたえがありました。ほかにも、舞台となっているアイルランドの hen party や ball を楽しむ若い女性たちを羨んだりしながら読むと、470 ページもそう長くは感じられませんでした。

 お決まりのハッピーエンドとは違う、ほんわり温かい終わり方も良かったと思います。
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2018年09月21日

「The Green Mile」

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Stephen King 著

 Stephen King の本は、著者名がタイトルの数倍大きく書かれているのが一般的です。それだけ、読者の期待を裏切らない作家だということなのでしょう。

 この作品もそうでした。最後の最後まで気になる謎が残り、それが明かされるまで読んでしまいました。もちろん、この作品の魅力は、伏線とその回収といった構成だけではありません。それぞれの登場人物を通して見える人生の現実に共感したり、学んだりする点が多くありました。

 この作品には、常識を超えた力をもつ人物が登場しますが、その非現実性を超える圧倒的なリアリティを感じました。誰も持たない能力を持つ人が活躍してハッピーエンドを迎えると、そんなことは起こりえないと根拠もなく思ってしまいますが、特殊な能力の代償があまりに大きいと、なぜか現実的に見えてしまいます。

 リアリティとは『割り切れないもの』と言い換えられるのかもしれません。表裏一体の関係にあるものごとの表側しか見ないのではなく、この小説の主人公が語るような裏側も描かれると、一気にリアリティが増すように思えました。

 そのリアリティのなかに人生の哲学を見た気がします。
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2016年11月18日

「A Redbird Christmas」

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Fannie Flagg 著
Vintage Classics 出版

 (アメリカの) Amazon.comでは、500件を軽く越すレビューが書かれているので、ベストセラーと呼んでもいいと思います。ただ、それらレビューの高評価には、あまり同意できません。タイトルにあるとおりクリスマスのお話なので、クリスマス・ストーリーの原則どおり「めでたし、めでたし」で終わるべきだということを頭では理解していても、ここまで幸せの大盤振る舞いになると少々興ざめしてしまいました。

 物語は、孤児として育った中年男性 Oswald が肺を患って余命宣告を受け、寒さ厳しいシカゴを出て、アラバマへと引っ越すところから始まります。新天地で、さまざまな人や生き物にであい、それまで縁のなかった居心地のいい時間を過ごし、好きなことを見つけ……と展開していきます。

 登場人物それぞれの個性が際立ち、都会では見つけづらい穏やかなコミュニティの描写も優れていて、読むのが楽しかったのですが、それでも畳みかけるようなハッピー・エンドは、好きにはなれませんでした。クリスマス・ストーリーのあるべき姿を理解できていないだけかもしれませんが、わたしの気持ちとしては、ちょっぴり残念でした。
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2016年04月28日

「Joyland」

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Stephen King 著
Hard Case Crime 出版

 21歳の男子大学生がアルバイトをしながら過ごした夏休みとそれに続く秋のできごとが描かれた作品です。失恋をしたり、一生付き合いの続く友人を得たり、その大学生の成長が描かれているだけでなく、殺人事件の謎解きや霊というスピリチュアルな世界などの要素も加わって、盛りだくさんな内容になっています。

 タイトルにある Joyland は、大学生のアルバイト先の名前です。ディズニーランドのような大型テーマパークではない、大きめの移動遊園地といった風情の夏季限定遊園地です。21歳の大学生が、時を経て老境にさしかかり、かけがえのないひと夏の思い出を振り返るスタイルで書かれている本作において、この Joyland は、古き良き時代の象徴であり、彼にとっての忘れがたい思い出の象徴でもあります。

 そして何より、もう二度と現実に行くことができない、心のなかだけで存在しつづける場所であり、それは二度と会えない人々とも重なります。切ない物語でした。
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