2009年07月29日

「Family Businesses: The Essentials」

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Peter Leach 著
Profile Books Ltd 出版

 家族経営独特の問題を扱った本です。家族経営といえば、体系だてて経営を学ぶより、我が家流が重んじられる印象があります。それはこの本の著者の出身地でもあるイギリスでも似たような状況だったようです。一方、アメリカでは、その分野での研究や実践が進んでいました。それを知った著者は、イギリスにもそれらを導入し、その内容がこの本にも反映されています。

 家族経営の場合、経営における優先順位が一般の株式上場企業などとは異なるケースが多いと思います。たとえば、大きな利益を上げることよりも、長く存続し家族が代々生計を立てられることを優先するなどです。なので、やはり家族経営独特の問題を取り上げ、ベストプラクティスとされることを知るのは有益なことだと思いました。

 わたしは、経営に関わった経験もなければ、知識もないのですが、この本を読んでなるほどと思ったことが何点かありました。

 ひとつは世代交代です。まず創業者から次の世代への交代。さらに、その次の世代への交代があります。前者の場合、自分があっての会社という創業者の自負があるだけに、計画を立て円滑に承継する難しさがあります。後者の場合、創業者から見ると孫の世代にあたり、姻族も含めると家族と呼ばれる範囲が一挙に広がり、意思決定権の範囲や出資範囲などについて取り決めが必要になります。この本では具体的に考慮しなければならない点がひとつひとつ挙げられています。

 もうひとつは外部支援の活用方法です。やはり、ある程度会社規模を大きくするにあたっては、外部の力を有効に活用する必要があります。その際の注意点も述べられています。

 日本の企業数全体から見たとき、家族経営を基盤とする中小企業あるいは零細企業が数の上では一番多いと思います。しかし、今は大手企業でさえ存続が難しい時代になっています。こういう理論を積極的に取り入れ、少しでも安定した経営を目指すことは大切なような気がします。
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2009年05月08日

「The Return of Depression Economics and the Crisis of 2008」

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Paul Krugman 著
W. W. Norton 出版

 著者のポール・クルーグマン氏は、2008年のノーベル経済学賞の受賞者です。とはいえ、飛びぬけて秀でた人の書いたものは、わたしのような凡人にもわかりやすいです。経済のいろはも知らずとも、簡単な身近な例を挙げて、誰にでもわかるように説明されています。

 クルーグマン氏は、昨年のリーマン・ブラザーズ破綻からどんどん悪化している状況は、1990年代の日本のバブル崩壊と同じ道筋を辿る危険をはらんでいるといいます。

 では、1990年代の日本はどういう状態だったのかというと、グロース・リセッションにあり、流動性の罠に陥っていたというのです。

 グロース・リセッションというのは、経済成長(グロース)しているのに、不景気(リセッション)という、やや珍しい状況のようです。経済成長はGDPを指針としているのですが、たしかに日本の場合、1980年代に比べると落ちていましたが、バブル崩壊後もマイナス成長が続くといったほどではありませんでした。でも、不景気に感じていたのは、実際はもっと経済拡大しているのに、GDPがそこまでに至らず、設備や人が余っている状態になっていたからと説明されていました。なるほど。

 流動性の罠というのは、金融緩和を実施しても、効果がなくなる状態に陥っているということだそうです。景気が悪くなると、金利を下げ、融資による設備投資などに期待します。しかし、金利が低くなっても、景気がよくなるとは限りません。結局は、設備投資が収益拡大に向かい、人々が賃金から消費しなければ、全体としての景気感は変わりません。日本の場合、先行き不安が強いためか、消費に結びつきませんでした。しかも、債権でも持っていても現金で持っていても同じようなものですから、タンス貯金になってしまいました。クルーグマン氏は、そういう流動性の罠に陥った状況は、インフレにならなければ脱出できないといいます。つまり、今持っている現金が目減りするなら、使ってしまおう、という方向に人々が動かないと景気は良くならないそうです。

 個人的には、インフレになってまで景気が上向くことが大切なのかが、よくわかりませんでした。(もともと、あまり景気に影響されない生活をしているのかもしれません。)

 著者は、日本のバブル崩壊後の状況に陥らないためには、すべきことは二点あるといいます。ひとつは、以前と同じだけ銀行が融資業務を行なえるよう、銀行に資本を注入すること。もうひとつは、公共事業などを大規模に実施し、景気刺激対策を怠らないこと。前者は、世界各国が足並みを揃える必要があるといいます。ここ二十年くらいのグローバル化により、国境を越えて流れていた資金が従来どおりに動く必要があるというのです。

 この本の数字を見ていると、頭がくらくらしてきました。たとえば、米国の銀行には2兆ドルくらいの資金を投入するのは当然であり、融資が正常化しなければ、正常化するまで資本を入れる必要があると書かれています。

 これが、現実の話ではなく、学問で終わる話ならいいのに、と思ってしまいました。わたしは、今までどおり、のほほんと生活していけるのでしょうか。
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2009年02月18日

「The Tavern in the Morning」

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Alys Clare 著
Hodder & Stoughton 出版

 英国歴史小説。一応ミステリというかたちになっていますが、犯人探しの途中で起こるロマンスのほうが主の印象を受けました。

 12世紀、ケント州にある宿屋で、ひとりの男が死んでいるのが発見されます。前夜に宿屋で食べたものが原因だと噂されます。宿屋のパイに疑いの目が向けられるなか、その宿屋の主人と親交のあるJosse d'Acquinという、Richard I世に仕える騎士が調べ出します。その相談役になるのが大修道院長であるHelewise。このふたりが、いわばミステリの探偵役として物語が進みます。

 Josseは、宿屋でパイを食べて死んだ男は、実はほかの男に出される予定だったパイを食べて死んだのではないかと推理します。その「ほかの男」を探している途中、突然襲われ、頭を怪我します。そこを助けてくれたのが、Ninianという少年とその母親であるJoanna de Leon。この親子は、本来パイを食べて死ぬはずだった男と繋がりがあり、身を隠していました。さきほど書いた「ロマンス」とうのは、このJoannaとJosseのあいだのことです。

 毒を盛ったのは誰か、という犯人探しよりも、このJoannaの生き方のほうに目が行ってしまいました。ある男の罠に落ち、翻弄されながらも潔く生きる姿は人に力を与える強さがあります。また、その彼女を支えようとするJosseを見ると、やはりロマンスを前面に出したほうがいい作品ではないかと思いました。(ハッピーエンドではないので、ロマンスに分類できないのでしょうか。)

 全体的にもう少しテンポよく展開してもいいかも、という不満を感じないでもないですが、伏線も多く簡単に読むのを挫折してしまうほどの単調さではないと思います。わたしは、英国の歴史小説を読む機会が少ないので、興味深く読めました。
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2008年10月24日

「Vanished」

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Chris Niles 著
Pan Books 出版

 期待を裏切られてしまいました。でだしの期待感は、徐々に不審に変わり、最後は落胆。まさかこのまま、何もなく終わるということはないだろう、と微かな期待を抱きながら最後まで読みましたが、結局待ちわびていた「衝撃の結末」はありませんでした。肩を落とすとはこういう状態をいうのだと納得できるくらい、肩の力が抜けるという、せつない結果になってしまいました。

 でだしはよかったと思うのですが。

 主人公Sophie Grahamは、ニューヨークで女優を目指して暮らしながらも目がでず、バーで働き、生計を立てている。2月、そのバーで、卒業以来連絡を取り合っていなかったElectra Jordanとばったり会う。Electraは父Richardとその再婚相手のMargariteと一緒だ。近況を伝え合う状況の中、Sophieは、私立探偵をしていると嘘をついてしまう。高校生時代、Electraからイジメを受けていたSophieは、みじめな身上を赤裸々に語りたくない。しかし、5月になり、Electraと連絡がとれなくなったから探して欲しいと父親から依頼されてしまう。本当は私立探偵ではないと言いだしにくい状況に加え、魅力的な報酬だったため、結局依頼を受け、素人ながら捜査を始める。

 Electraの親友だったPixieと会った直後、Pixieは不審な行動をとりはじめる。ElectraのボーイフレンドだったFrenchに連絡を取り、Sophieの身辺を探らせたり。もっとも怪しいのは、Frenchに拳銃を買わせたこと。

 さらに、物語は進み、死人がふたりでて、最後にSophieは失踪していたElectraを見つける。そこでの告白は、「そんなこと?」と拍子抜けするくらいありきたり。

 もちろん現実社会で同じ話を聞けば、すごい衝撃を受けるでしょうし、余計なことをしたと自分を非難したくもなるでしょう。でも、小説のプロットという観点で見れば、陳腐です。

 誰かが太鼓判を押して勧めてくれたわけでもなく、気まぐれで手にとった本なので、「ハズレでした、ちゃんちゃん」で終わらせるしかありません。でも、こうして愚痴を書いたら、溜飲が下がりました。

 ちなみに、Webサイトで調べてみると、Amazon.comではもう在庫がありませんでした。Amazon.co.jpには在庫があるようです。このプロットだと、やはり売れ残りでしょうか。
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2008年10月20日

「The New Paradigm for Financial Markets The Credit Crisis of 2008 and What It Means」

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George Soros 著
Public Affairs 出版

 著者のSoros氏は、Soros Fund ManagementやOpen Society Instituteの会長をなさっている方です。わたしのレベルでは、経済に明るい方なんだろうな、という漠然としたイメージしかもてないのですが。

 2008年5月に出版されたこの本で、一番インパクトのある内容は、2007年のサブプライムローン問題に端を発した今回の金融危機は、あの世界大恐慌に匹敵する規模のものだという予測です。それを読んで、日本でも不景気が長引き、中小企業の倒産が増えることになるのだろうか、とぼんやりとしたイメージを持っていました。リーマンが倒れるまでは。

 次にきたAIGの資金ショートは、さらに驚きました。証券会社にはなんのご縁もありませんが、保険はわたしの生活の必需品です。国民年金が当てにならないと言われて久しく、個人年金で備えなければ、と思っているのに、保険会社も先行き不透明なのでは、大変です。このままでは、リスク分散のつもりで複数の保険会社と契約していても、結局はひとつの会社とのおつきあいになる可能性もあるような雲行きです。

 大変なことになったと実感が湧き、Soros氏の予測は当たっているのかも、という気がしてきました。

 Soros氏は、この本の中で、サブプライム問題の対処は不可欠であると述べたあと、対応案を提示されています。しかし、現ブッシュ大統領任期中の効果的な対策は難しいことが、暗に示されています。そうなると、今まで以上に経済対策に重きが置かれ、大統領選も本当にどうなるかわからなくなってきます。

 日本の選挙よりも、アメリカの大統領選のほうが気になるくらいです。

 しかし、今の金融危機に不安になっても、なんとかなりそうな気分にもなれました。それは、Soros氏がご自分のご家族、少年時代のことを記されているからです。ナチの占領を経験したハンガリーに生まれたユダヤ系のSoros氏の少年時代は恵まれたものとは言い難かったと思います。それでも、用心深く準備していた父親のおかげで、偽の身分証で過ごす日々を経て、結局アメリカでこれだけの成功を収めることになったわけです。

 今わたしが生きている世界は、生まれによって、命を奪われるような環境にはありません。それだけでも嬉しいことです。くよくよと金融危機の心配をするよりも、景気も含めて何でも、底を打ったら、次は上昇に転じるものだ、ぐらいに考え、自分にできることを頑張っていたいと思いました。
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