2016年02月11日

「白いしるし」

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西 加奈子 著
新潮社 出版

 自分以外の恋人がいて、しかも、その恋人と別れられないのをわかっている男と関係をもってしまい苦しんだあれこれが綴られています。

 恋人がいることを知っていても、男の口から恋人とは別れられないと言われなければ前に進めない姿を認めて読むのは、なかなか辛いものです。しかも、そういう結末が読む側に伝わるよう冒頭から書かれてあり、明るい展開を期待することもできません。

 もし、同じような経験をしていたら、共感できた作品なのでしょうか。わたしは、いたたまれない重いムードしか感じられませんでした。
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2016年01月17日

「本にだって雄と雌があります」

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小田 雅久仁 著
新潮社 出版

 本が好きで好きで、本で家じゅう埋め尽くされている読書家なら、「本が勝手に増えていっている」と言いたくなるときがあるのかもしれません。では、どのようにして勝手に増えていくのでしょうか? それがこの本のタイトルです。本にも雄と雌があって、その生殖活動によって本が増えていくというわけです。

 そういう言い訳ができたら……と共感してしまう読書家ならきっと、読みたい本を読み尽くすには人生は短すぎると思っていることでしょう。そういう読書家にとってのユートピアがファンタジーとして登場します。

 タイム・トラベルの趣があり、コメディのテイストを備え、駄洒落が連発されるなかにまともなトリビアが埋め込まれているというややこしい話で、どういったジャンルの本と括るのは、わたしにはできそうにありません。ただわたしには、本好きが気に入りそうなフィクションの世界に見えました。
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2015年11月26日

「赤い月」

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なかにし 礼 著
文藝春秋 出版

 満州国の盛衰に翻弄されながらも、自らの感情に素直に生きた女性(作者の母親がモデル)の物語です。昭和初期、女性が家に縛られていた時代に結婚していながらも恋を追い求め、騒乱の世において何がなんでも生き抜こうとする姿はドラマチックではありますが、なんとなく薄っぺらな印象を受けました。

 満州国に渡る以前の恋愛、渡ってからの右肩あがりの発展、諜報活動の密告、敗戦とその後の引き上げなど、あまりに多くのできごとが作品のなかに詰まっていて、登場人物にこまやかな感情の動きが見られないことがその原因かもしれません。やや物足りなさを感じました。
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2015年11月15日

「女子芸人」

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神田 茜 著
新潮社 出版

 作者は、講談師です。これが2作目の小説で、2010年に新潮エンターテイメント大賞(2012年を最後に打ち切られた賞)を受賞しています。

「さすが芸人さん!」と思うユーモアのきいた場面もありますが、なんとなく締まりのない印象が拭えません。芸人さんという見慣れない職業の女性であっても、優等生のような良い子が悩んでいる姿が表面的に描かれていても、そう面白くはならないのだと思いました。いつの時代の誰の身にも当てはまるようなちょっとした不満や後悔を描くなら、もう少し違った視点が欲しかったように思います。
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2015年11月12日

「模倣犯」

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宮部 みゆき 著
小学館 出版

R.P.G.」で事件を解決に導いたデスク係という警察官が、先にこの作品に登場していたということで読んでみました。ミステリで警察といえば刑事を思い浮かべるのですが、このデスク係は後方支援部隊で、捜査上で判明した事実を記録したり諸々の申請書類を作成するのが役割で、捜査はしません。あまり見かけない警察官なので、興味をもったわけです。

 1000ページを超す大作で、途中、読むのが辛くなった部分もありました。いわゆる警察小説のように犯人を追う警察の捜査が軸になっているわけではなく、犯人が自分たちの理屈を詳細に語る部分がかなりあって、自分たちは歴史に残る犯罪を成し遂げる才能ある特別な人間だと滔々と語る場面が続くと、うんざりしました。

 ただ、そういった犯罪者の思い込みを描ききらないと、タイトルの模倣犯が意味するところを理解できない仕組みになっています。最後の最後に模倣犯の意味するところがわかったとき、警察側の中心人物が刑事ではない理由もわかります。緻密な作品で、1000ページ以上も読む価値はあった気がします。
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