2015年11月15日

「女子芸人」

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神田 茜 著
新潮社 出版

 作者は、講談師です。これが2作目の小説で、2010年に新潮エンターテイメント大賞(2012年を最後に打ち切られた賞)を受賞しています。

「さすが芸人さん!」と思うユーモアのきいた場面もありますが、なんとなく締まりのない印象が拭えません。芸人さんという見慣れない職業の女性であっても、優等生のような良い子が悩んでいる姿が表面的に描かれていても、そう面白くはならないのだと思いました。いつの時代の誰の身にも当てはまるようなちょっとした不満や後悔を描くなら、もう少し違った視点が欲しかったように思います。
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2015年11月12日

「模倣犯」

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宮部 みゆき 著
小学館 出版

R.P.G.」で事件を解決に導いたデスク係という警察官が、先にこの作品に登場していたということで読んでみました。ミステリで警察といえば刑事を思い浮かべるのですが、このデスク係は後方支援部隊で、捜査上で判明した事実を記録したり諸々の申請書類を作成するのが役割で、捜査はしません。あまり見かけない警察官なので、興味をもったわけです。

 1000ページを超す大作で、途中、読むのが辛くなった部分もありました。いわゆる警察小説のように犯人を追う警察の捜査が軸になっているわけではなく、犯人が自分たちの理屈を詳細に語る部分がかなりあって、自分たちは歴史に残る犯罪を成し遂げる才能ある特別な人間だと滔々と語る場面が続くと、うんざりしました。

 ただ、そういった犯罪者の思い込みを描ききらないと、タイトルの模倣犯が意味するところを理解できない仕組みになっています。最後の最後に模倣犯の意味するところがわかったとき、警察側の中心人物が刑事ではない理由もわかります。緻密な作品で、1000ページ以上も読む価値はあった気がします。
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2015年10月22日

「R.P.G.(ロール・プレーイング・ゲーム)」

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宮部 みゆき 著
集英社 出版

 ぐいぐいと惹きよせられたものの、最後に騙されていたと知ったときは、あまりに型破りな終わり方で、落胆すべきなのか、怒るべきなのか、よくわかりませんでした。でも、タイトルのR.P.G.(ロール・プレーイング・ゲーム)に二重の意味があったことに気づいたときは、練られた作品であることは間違いないと思いました。

 この型破りな方法は、読者を肯定派と否定派に真っ二つに割るのだと思います。わたしは、実験小説としておもしろいと感じたので、肯定派です。そうはいっても、作者が破ったルールが守られないとなると、作者と読者の対話が壊れてしまう気がして残念でもあります。

 それでも、ぐいぐいと惹きよせられるだけの人物描写があったので、これからもこの作家の作品は読むと思います。とりあえず、この作品の主人公のひとりが最初に登場した「模倣犯」という作品を読んでみたいと思います。
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2015年09月25日

「村上海賊の娘」

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和田 竜 著
新潮社 出版

 2014年の本屋大賞受賞作品なので、いまさらですが、読んでみました。

 歴史小説にコミカルなテイストを持ち込む以上、ある程度の誇張は必要だとは思いますが、リアリティが薄れるいっぽう、そう面白く仕上がっていなくて、上下巻という量を読むのが少し厳しく感じられました。「のぼうの城」くらいのボリュームであれば、普段本を読まない、歴史小説を読んだことがない層をターゲットに、読みやすい作品になったのかもしれません。(といっても、ベストセラー作品なので、それだけですごいことではありますが。)

 海賊の海戦は面白い話題だと思いましたし、戦国時代で闘った娘も興味が湧く人物イメージではありました。ただ、過剰気味なこまごまとした説明を書くのなら、戦国時代の価値観に現代のそれを当てはめるのではなく、戦国時代の価値観そのものをもっと掘り下げるように書いて欲しいと思いました。
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2015年07月06日

「稲荷山誠造 明日は晴れか」

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香住 泰 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン 出版

 この作品が受賞した「本のサナギ賞」という賞を調べてみたところ、プロの作家を目指す方々が応募し、現役書店員が世に出したいと思う作品を選ぶ賞のようです。同じように書店員が選考する本屋大賞が既に出版されている本を対象にしているいっぽう、この本のサナギ賞は、受賞によって初版2万部で出版されることになります。

 この作品は、その本のサナギ賞の優秀賞を受賞しています。まさしくサナギの作品だと思います。読み手が作品から何かを読みとるとか感じとることを期待していないかのように、何もかもスッパリと説明されています。わかりやすいともいえますが、物足りないともいえます。本を読み慣れている読者ではなく、本など読まない層に最初の一冊として読んで欲しいというコンセプトなのかもしれません。

 タイトルの稲荷山誠造というのは、娘と断絶状態にある老人です。ある日突然訪ねてきた初対面の孫とふたり、行方不明になった娘を捜しだす羽目になります。そのハチャメチャな展開は楽しめますが、もう少し気持ちや価値観の移り変わりをひとことで説明して終わらせるのではなく、それぞれの読者がそれぞれ推察できるよう描写されていれば、もっと楽しめたのではないかと思います。
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