2015年10月22日

「R.P.G.(ロール・プレーイング・ゲーム)」

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宮部 みゆき 著
集英社 出版

 ぐいぐいと惹きよせられたものの、最後に騙されていたと知ったときは、あまりに型破りな終わり方で、落胆すべきなのか、怒るべきなのか、よくわかりませんでした。でも、タイトルのR.P.G.(ロール・プレーイング・ゲーム)に二重の意味があったことに気づいたときは、練られた作品であることは間違いないと思いました。

 この型破りな方法は、読者を肯定派と否定派に真っ二つに割るのだと思います。わたしは、実験小説としておもしろいと感じたので、肯定派です。そうはいっても、作者が破ったルールが守られないとなると、作者と読者の対話が壊れてしまう気がして残念でもあります。

 それでも、ぐいぐいと惹きよせられるだけの人物描写があったので、これからもこの作家の作品は読むと思います。とりあえず、この作品の主人公のひとりが最初に登場した「模倣犯」という作品を読んでみたいと思います。
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2015年09月25日

「村上海賊の娘」

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和田 竜 著
新潮社 出版

 2014年の本屋大賞受賞作品なので、いまさらですが、読んでみました。

 歴史小説にコミカルなテイストを持ち込む以上、ある程度の誇張は必要だとは思いますが、リアリティが薄れるいっぽう、そう面白く仕上がっていなくて、上下巻という量を読むのが少し厳しく感じられました。「のぼうの城」くらいのボリュームであれば、普段本を読まない、歴史小説を読んだことがない層をターゲットに、読みやすい作品になったのかもしれません。(といっても、ベストセラー作品なので、それだけですごいことではありますが。)

 海賊の海戦は面白い話題だと思いましたし、戦国時代で闘った娘も興味が湧く人物イメージではありました。ただ、過剰気味なこまごまとした説明を書くのなら、戦国時代の価値観に現代のそれを当てはめるのではなく、戦国時代の価値観そのものをもっと掘り下げるように書いて欲しいと思いました。
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2015年07月06日

「稲荷山誠造 明日は晴れか」

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香住 泰 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン 出版

 この作品が受賞した「本のサナギ賞」という賞を調べてみたところ、プロの作家を目指す方々が応募し、現役書店員が世に出したいと思う作品を選ぶ賞のようです。同じように書店員が選考する本屋大賞が既に出版されている本を対象にしているいっぽう、この本のサナギ賞は、受賞によって初版2万部で出版されることになります。

 この作品は、その本のサナギ賞の優秀賞を受賞しています。まさしくサナギの作品だと思います。読み手が作品から何かを読みとるとか感じとることを期待していないかのように、何もかもスッパリと説明されています。わかりやすいともいえますが、物足りないともいえます。本を読み慣れている読者ではなく、本など読まない層に最初の一冊として読んで欲しいというコンセプトなのかもしれません。

 タイトルの稲荷山誠造というのは、娘と断絶状態にある老人です。ある日突然訪ねてきた初対面の孫とふたり、行方不明になった娘を捜しだす羽目になります。そのハチャメチャな展開は楽しめますが、もう少し気持ちや価値観の移り変わりをひとことで説明して終わらせるのではなく、それぞれの読者がそれぞれ推察できるよう描写されていれば、もっと楽しめたのではないかと思います。
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2015年06月25日

「中央構造帯」

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内田 康夫 著
講談社 出版

 2時間枠のテレビドラマで見かける浅見光彦シリーズのひとつです。このシリーズに人気が集まる理由が漠然とですが、わかった気がします。主人公があまり饒舌に語らず、いろんな要素がバランス良く組み込まれている点が好まれているのではないでしょうか。

 主人公は、フリーランスのルポライターで、兄が警察庁刑事局長という立場にあるものの、自身は法の遵守を掲げる立場をとらず、柔軟に人々を助けている点が読者の共感を呼ぶのではないかと思います。また、この作品では、バブル崩壊後に銀行内部で行われた隠蔽工作が描かれると同時に平将門のエピソードも盛り込まれていて、適度な薀蓄が魅力になっています。過去の暗い面と一緒に再生の兆しも描かれていて読後感も悪くありません。

 そうはいっても、戦争のときといい、バブルのときといい、上に立つ人間ほど襟を正すべきときに調子にのってしまうというのは、情けないものです。わたしたちは歴史から学ぶべきことがまだまだありそうです。
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2015年06月14日

「出版禁止」

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長江 俊和 著
新潮社 出版

 帯には、「日本全国のミステリ愛好家へ。秘密をすべて解ける者、求む!」とあり、密室トリックを解いてみろと問う推理作家による小説のように見えなくもないのですが、実際に問われているのは、トリックではありません。一種の言葉遊びです。

 敢えてミステリに譬えるのなら、読者に密室トリックを披露するためだけに密室をつくりあげたミステリ小説のような作品です。ただし密室がつくりあげられたかどうかは不明です。その部分の客観的な描写が欠けていて、読者を巻き込むために必要とされるフェアな条件はありません。

 ちょっとした思いつきを本1冊分のページ数を割いて「どうだ! すごいだろ!!」と言っているだけのようで、わたしはあまりこの作品を評価できませんでした。どうやら世間の評価は分かれているようで、好みが分かれる作品なのかもしれません。
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