2017年07月16日

「えっ! この表現でそんな意味? 英語おもしろノート」

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 知ってよかったと思えた表現に次の2つがあります。

ーget the sack は、『クビになる』の意

『袋を手に入れる』のこの袋 sack は、職人が自分の道具を入れておく袋で、産業革命の初期、職人は雇われている間、自分の道具を袋に入れて雇い主に預けることになっていたそうです。つまり、その袋が職人の手に戻るときは、クビになったときということから、この表現が生まれたそうです。(反対の立場で人をクビにするときは、『give someone the sack』。)
同様に、pink slip をもらっても解雇されたことになります。こちらは、解雇通知書がピンク色だったことから、きています。なんでも給料袋に入っていたとか。

ーred tape は、 『お役所仕事』の意

 次の例文の red tape は『(形式にこだわる)お役所仕事』、『(お役所などの)面倒な手続き』『官僚の形式主義的手続き』を意味するそうです。なぜなら、18〜19世紀のイギリスでは、役人が公文書を保管するために、書類を丸めて red tape (赤いテープ) で留めるのが習わしだったため、その赤いテープで留めたり解いたりしなければならず、かなりの時間を要したから。
A: How is your business going?
B: Not so good. I work with government offices. It takes so long to get past the red tape.

 次は、この本を読む前から知っていた表現ですが、読んだことにより、理解が深まりました。

ーhit the spot は、『満足させる』の意

 仕事を終え、花見などをしながらビールをひと口。こんなときに聞く hit the spot。この spot がどこか、気になっていました。本書によると、飲んだり食べたりする場所 (部位)、つまり『胃』のことだそうです。その場所 (部位) に、その飢えや乾きを満たすものが『触れる』ので、『満足させる』の意味になるそうです。疑問が消えました。
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2017年05月25日

「歴史をかえた誤訳」

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鳥飼 玖美子 著
新潮社 出版

 タイトルにある『誤訳』は、時間や能力などに限りがあって、意図せず間違えてしまった訳ではなく、広い意味での誤った訳のことです。『あやまる』ということばを広辞苑 (第6版) で引くと、ひとつに『普通の状態からはずれる。正常でなくなる。』とあり、この意味が近いと思います。それら誤訳を自分なりに分類してみると、以下のようになりました。

1. 能力がまったく足りていないのに通訳や翻訳をした結果、コミュニケーションが成立しなくなったケース

 論外のケースで、著者のおっしゃるとおりという感想しかありませんでした。

2. 思い込みなどに阻まれ、意図せず一部間違えたケース

<例>
日本語:大きな航空母艦
訳された英語:unsinkable aircraft carrier (不沈空母)

 この『不沈空母』は、実際には大型船舶ではなく、沈みようのない航空基地を意味しています。この間違いの背景は、本書で詳しく説明されていますが、通訳の場合、翻訳に比べて時間的制約が大きく、つい間違えてしまうことは、あり得ると思います。首脳会談などの通訳は、本当に大変だなと思わず同情してしまいました。

3. 黒子として通訳や翻訳に携わるのではなく、自らにとって都合のいいように意図的に歪めたケース

 1999年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の検討に際し、政府が意図的に軍事色が薄れる訳にしているとして、新ガイドライン研究会という団体が自らの訳と政府訳を比較対照し、説明を加えた書籍(「超明快訳で読み解く日米新ガイドライン」)を出版しました。以下は、本書で紹介されているその抜粋です。本書に紹介されている文脈では、新ガイドライン研究会の指摘が、わたしには妥当に見えました。

<例>
mutual cooperation planning in situations in areas surrounding Japan
同研究会訳:日本周辺地域における事態での相互共同作戦計画作成
政府訳:周辺事態に際しての相互協力計画

sea lines of communication
同研究会訳:海上補給路
政府訳:海上交通

logistics support activities
同研究会訳:兵站支援活動
政府訳:後方支援活動

intelligence gathering and surveillance
同研究会訳:諜報収集と監視
政府訳:情報収集及び警戒監視

4. 文化的背景を考慮すべき場面で、苦慮するケース

<例>
(日米貿易摩擦の原因となった日本の繊維製品輸出の自主規制を求められた場面で)
日本語:善処します
訳された英語:I'll do my best

『善処』すると言われて、結果を期待する日本人は少ないと思いますが、英語の best は、かなり積極的に聞こえます。ちなみに、広辞苑第6版で『善処』をひくと、『物事をうまく処置すること』とあります。辞書に載っている意味から離れて訳すのは難しく感じるいっぽう、あとになって『最善を尽くす』と言ったではないかという議論になっても困ると感じました。

 以下は文学作品からの例です。本書のタイトルからは一番離れている話題ですが、一番楽しめました。

<例>
太宰治の「斜陽」:
お昼すこし前に、下の村の先生がまた見えられた。こんどはお袴は着けていなかったが、白足袋は、やはりはいておられた。

ドナルド・キーン訳:
A little before noon the doctor appeared again. This time he was in slightly less formal attire, but he still wore his white gloves.

 男性の白足袋という日本の正装を白手袋という英語圏での正装に置き換えている点で名訳とされていると紹介されています。もしわたしがアメリカ人で、日本文学に興味をもって読む機会があったら、袴は袴として、白足袋は白足袋として登場してもらいたいと思いますが、これが名訳とされることには納得できます。

 通訳とか翻訳は、わたしにとって興味の尽きない話題です。
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2017年04月06日

「心にとどく英語」

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マーク・ピーターセン 著
岩波書店 出版

 タイトルにある「心にとどく」とは、『ニュアンスを正確に』といった意味です。普段なんとなく英語を使っていますが、『なんとなく』使っていただけに、間違って使っていた用語が次々と見つけられて、読んだ価値がありました。

【from now on (for a change)】
『これから』というタイミングを強調したいときに、from now on を使っていましたが、『これまでと違って』というのが正しい『強調』点だそうです。

I'll pay the NHK 'reception fee' from now on.

 上記の例は、単に「これからNHK放送受信料を払う」という意味ではなく、「今までずっとなんとか払わずにすんでいたが、バレてしまったので、これからはちゃんと払うしかない」というニュアンスだそうです。わたしが『これまでと違って』を強調したいときに使っていた for a change は、また『これまでの状態』に戻ることを想定した『たまには』の意味になるようです。

Can we talk about something other than Hollywood for a change? We're educated people.

 上記の例は、「たまにはハリウッド以外の話ができないかな。ぼくたちは知識人だろ?」と訳されています。

【(目的語の正当性を疑う) challenge】
U.S. May Seek to Challenge East German Medals

「米、東独のメダル破棄を要請する」と訳されている上記の新聞の見出しのように、challenge を動詞として使うのは、わたしには思いつかない例ですが、この challenge の語源は「誹謗」であり、正当性等を疑って対決を申し入れるのが、基本となる意味だそうです。そこまで強い意味とは知りませんでした。

I challenged him to run in a marathon.

もうひとつの例は、人が主語になっていますが、「じゃあ、マラソンができるなら、やってみろ」という訳になっています。語調がわたしの認識より強いです。これからは慎重にこの単語を使いたいと思いました。

【(迷惑の) on 】
Don't give up on me now.

 上記の例は、映画からの引用で、足を洗ったはずの主人公がまた犯罪に手を染めようとしているので、弁護士であり恋人である女性が「ちゃんとした人生を取り戻すために、私も一緒に頑張ってきたんじゃないの。あなたがそれをあきらめてヤクザに戻ってしまったら、困るのよ」という感じだそうです。前置詞は、奥が深く、いつまで経っても理解できた実感が持てません。

【(エラそうにならないための) you】
 小説の会話などで、明らかに自分自身のことを指しているのに you が使われていることが時々あります。初めて読んだときは「あれ、自分の話だよね?」と混乱しました。自分のことなのに、一般論の you を使う理由を著者は、自慢話にならないように使われるケースが多いと説明しています。

レポーター: How does it feel to win Wimbledon for the first time? (ウィンブルドンの初優勝は、どんなお気持ちですか?)

選手: Well, when you train hard every day for years with one goal in mind, and some days you are just ready to give up, and then suddenly you find yourself at the top like this, you feel like you must be dreaming. (そうですねぇ、一つの目標を目指して何年も毎日続けて厳しいトレーニングをやってきて、そして、もうやめようかと思う日さえあった上、突然こうして成功の絶頂に達したとなると、まるで夢のような感じですね。)

 日本語と比べて、主語を省くのが難しい英語の場合、こうして『私が、私が』とエラそうになるのを避けるのだと納得できました。
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2017年03月23日

「明治大正 翻訳ワンダーランド」

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鴻巣 友季子 著
新潮社 出版

 翻訳家である著者がさまざまな切り口から、明治・大正時代の翻訳文とそのエピソードを紹介しています。この本を読むまでは考えたこともありませんでしたが、日本語の外の世界にあるものを、日本語の世界にいる人たちに伝えようとした人たちは、一世紀以上も前から試行錯誤を繰り返してきたのだと気づかされました。

 紹介作品のうち、新聞に連載された、黒岩涙香(るいこう)の翻案作「正史実録 鉄仮面」は、読者を楽しませたいと苦心した黒岩涙香によってストーリーが大胆に変更されました。どれほど面白くなったかは、著者の感想に頼らずとも、この作品が一世紀も経ってから新訳が出るほどの人気を得たことから窺い知ることができます。ここまでストーリーを変えても翻案と呼んでいいのかわかりませんが、「鉄仮面」の面白さを伝えたいという熱意は並大抵ではなかったようです。

 大ヒット作はほかにも、アニメで有名になった「フランダースの犬」があります。初の邦訳者は、日高柿軒(しけん・1879〜1956年)で、本国での出版(1827年)から約40年も経ってから、出版されたそうです。そのとき、ネロは清、パトラッシュは斑(ぶち)、ジャンおじいさんは徳爺さんという名で登場しました。それから約一世紀が過ぎ、ネロとパトラッシュを知る人もいない地元アントワープに日本人観光客が続々と訪れるほど、「フランダースの犬」は日本人に親しみのある作品に育ちました。

 そのほか、数え切れないほど数多くの子供たちに読まれてきた「小公子」は、初出が「女学雑誌」で、そこでは巌本善治妻と紹介されていた若松賤子(しずこ・1864〜96年)が翻訳しています。(翻訳家を誰々の妻と紹介するほど職業婦人が珍しい時代だったということでしょうか。)若松賤子は、早くに亡くなっていますが、もし翻訳を続けていれば、どんな作品が「小公子」のあとに続いたのでしょうか。

 これだけの作品を育てた人たちがいたことに感謝したい気持ちになりました。
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2017年02月26日

「海外ドラマDVD英語学習法」

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南谷 三世 著
CCCメディアハウス 出版

 タイトルのとおり、海外ドラマをDVDで鑑賞して英語を学ぼうというコンセプトです。することは至って簡単。自分が英語を使う場面や興味に基づきドラマを選び、DVDの字幕(英語・日本語)と音声(英語・日本語)を切り替えつつ見るというもの。

 DVDのシーンごとに(エピソードごとではなく)次を繰り返すそうです。
1回目:英語音声・字幕なし
2回目:日本語音声・日本語字幕
3回目:英語音声・英語字幕

 1回目は、一般的にネイティブがドラマを見るのと同じ条件(内容についてまったく知らない状態)で見て、どの程度聞き取れるのか、つまり、聞き取れなかったのは、どういうところなのか、自らの弱点を分析します。著者はこのパートを、テストと読んでいます。

 2回目は、1回目がテストなら、その答え合わせにあたる部分です。ドラマの内容を把握し、自らの理解が間違っていたのなら、なぜ(どのように)間違っていたのか考えます。

 3回目は、自分がわからないと思ったところは都度、再生を一時停止して、意味を調べたりしながら、理解を深め、自分なりの言葉のデータベースを構築します。著者がお勧めしているデータベースは、次のような項目で成り立っています。

−作品のタイトル(ドラマならばシーズン番号とエピソード番号を含む)
−DVDでそのセリフが出てきた時間
−セリフの発言者(誰のセリフか)
−セリフを言われた相手(聞き手)
−英語のセリフ
−DVDの日本語訳
ー英語の直訳

 わたしは、串刺し検索できる辞書ツールを使っていて、そこに自分で作ったユーザー辞書も加えています。その経験から、これらの項目は、著者がデータベース作成後、実際に使いながら、これらの項目をカスタマイズされたのが、なんとなくわかるので、貴重な情報だと思います。

 わたしなら、刑事ドラマかミステリで、この方法を試してみたいです。
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