2007年07月04日

「Assassin (Lady Grace Mysteries)」

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Patricia Finney 著
Delacorte Press 出版

 女王に仕える女性たちはMaid of Honourと呼ばれたそうです。女王の着替えを手伝ったり、話し相手になったり、大切なペットの散歩をいいつかったり、身の回りのお世話をするのですが、大体は良家の(資産家の)子女で、宮廷において将来有望な夫を探すために仕えているような感じです。

 この本の主人公、13歳のLady GraceはエリザベスT世のMaid of Honourという設定です。しかも、彼女の母親も同じようにエリザベスT世に近しい人だったのですが、女王を殺害するために仕込まれた毒入りワインを代わりに飲んで死んだため、Lady GraceはことさらエリザベスT世に可愛がられているという背景が描かれています。

 そのGraceが探偵役をつとめるこのシリーズの第1作である「Assassin」は、彼女の求婚者としてエリザベスT世が認めた3人の男性のうち1人が殺され、1人がその容疑者になるというものです。エリザベスT世から、真相を探り出す許可を得たGraceは、宮廷で洗濯をして働くEllieと曲芸師のMasouの力を得て、犯人をあぶり出します。そして、そこには自分自身の身に起こった不運な災難も隠されていました。

 この本は、Grace自身の日記という形で書かれています。そのため、少女の視点で物語が進んでいくのですが、そんなことを少女が知っていいのか、あるいはそんなことを少女が思うのかしら、と思うようなことがいくつも出てきます。やはり、英米あたりの中学生くらいだと、そういう現実を見ているのかな、などと思ってしまいます。

 Graceは女王の庇護下にあり、両親から受け継いだ資産を管理してくれる後見人も居て、将来16歳になったとき、結婚し夫がその財産を管理し、Graceの面倒をみてくれることになっています。(そのあたりの、男性に頼りきった女性の暮らしというのは、エリザベスT世の時代に合わせてあります。)しかし、Graceは、求婚者がお金目的でGraceを選んだこと、結婚には必ずしも愛が必要ではないこと、などを自ら学んでいきます。

 なんとなく、夢見る少女を想像したい私としては、過酷な現実をそんなに早くから知らなくてもいいのではないかと思ってしまいます。

 「The Switch」にしろ、「Rose Queesn」にしろ、英米圏の子供たちが、ませているというか、大人びているというか、うまく表現できないのですが、日本の子供たちと比べて自立しているように感じてきたのですが、またこの本でもそういう思いを強くしました。

 やはり、それが文化の違いなのでしょうか。

 物語自体は、最初の部分はその時代の背景がわからず停滞しがちですが、Graceが探偵役として動き出した途端におもしろくなり、最後まで一気に読める魅力があります。価値観や装いなどはその時代に合わせているとはいえ、文体はほとんど現代のものですし、ストーリーも特に時代がかっていないので、読みやすいと思います。
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2007年05月15日

「Scholastic Dictionary of Synonyms, Antonyms, and Homonyms」

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Scholastic Inc. 著
Scholastic Reference 出版

 対象年齢が9歳から12歳に設定されている、同意語、反意語、同音異義語のリファレンスです。それくらいの年代の英語を母語とする子供が、学校で与えられた課題を書く際に、限られた語彙の中から繰り返し同じ単語を使わず同じ内容を言葉を変えて表現できるようになるためのリファレンスのようです。

 英語を外国語とし、大人になっても勉強している私個人が感じる印象としては、リストアップされている単語(インデックスになっていて、辞書としてひけるようになっている単語)自体は、たぶん9歳から12歳くらいの子供が知っているのが理想とされるような範囲ではないかと推測します。一方、同意語あるいは反意語として列挙されている単語は、それ以上のレベルではないでしょうか。もし、9歳から12歳の子供がこのリファレンスに載っているすべてを勉強することを期待されているとなれば、かなりのショックを受けるレベルだと思います。私などは、一生12歳の子供レベルに達することはできないと、打ちひしがれてしまうかもしれません。

 実際に自分の持ち物にこの本を加えてみると、リファレンスとして使うというよりは、時々眺めるために置いています。パラパラとめくりながら、この単語とこの単語は、こういう部分が意味として重なっているなと考えたり、知っている単語の復習に使ってみたり、見たような気はするけど思い出せないような単語の類語を確認してみたり、どちらかというと知識の整理として使っています。

 試験対策のために単語リストから覚えた単語も、この本の中で見ると、その深みを感じます。この単語とこの単語が同意語に分類されるなんて、という意外性があるからです。

 私にとって、読むでもない、ひくでもない、守備範囲のあやふやな1冊で、英語に本当に自信が持てるまでは持ち続けるであろう1冊でありながら、リファレンスとしては勧めたいと思わない本です。
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2007年05月09日

「Inside the Crime Lab」

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Lorraine Jean Hopping 著
Scholastic 出版

 自分が専門とする分野の英語本なら、難なく読めるのに、好きなはずのミステリの場合「あれ?どこでそれが出てきたんだっけ?」などと、話についていけていないことが時々露見する私。

 やはり、一番大きいのは語彙の問題ではないかと、ミステリで出てきそうな単語を噛み砕いて説明してくれているこの本を手にとってみました。

 状況証拠、動機、法医学のような基本的な単語が説明されています。

 ただ、50ページ強というボリュームでは説明できることは本当に限られています。

 ミステリやサスペンスに関して、まだまだ語彙というほどの蓄えがない方には向いていますが、ある程度読んでいる方には物足りない内容でしょう。また、スラングのようなものは一切ありません。日本語でいうガイシャとかホシとかを期待していた私としては、ちょっぴりがっかりですが、それでも言われてみればわかるけど、自分からはアウトプットできない単語もかなり混じっていて、一読の価値はありました。

 もう少し一般的な、つまり学校教育的でない、ミステリに頻出するようなスラングが出ているような本が見つけられれば、と思います。
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2007年05月02日

「Lena」

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Jacqueline Woodson 著
Puffin 出版

 最近、幼児虐待のニュースを聞くことが多くなりました。今までもあったことが顕在化しているのか、幼児虐待そのものが激増しているのかわかりませんが、ニュースを聞くたび、露見していない同じようなケースがどれだけあるのかを考えてしまいます。そして、自分の良心に自信が持てなくなるのです。もし、幼児虐待が行なわれているのではないかと疑いを持ったとき、私自身がどういう行動をとるのかと。

 そういう事件に巻き込まれたときの自分の大変さを一番に思ってしまうのではないか、虐待を受けている子供のことを一番に考えられないのではないか、と怯えているのです。

 そういう子供たちは可哀想と思っても、気持ちの上では何もわかっていないのです。

 この本の主人公はLena。9歳のときに母親を癌でなくし、父親から性的虐待を受け続け、とうとう13歳のときに、8歳の妹Dionと家出することを決意します。住んでいたオハイオから、母親が生まれたというケンタッキーを目指します。

 この性的虐待を受けていた姉妹の心の動きが細かく描かれているのですが、すべて本当のことをのように思えてきて、心がえぐられるように感じるのです。

 妹のDionは、つらい虐待のことを記憶の中から閉め出そうとし、虐待を受けたことなどないと、姉のLenaに言います。姉のLenaは、逃げ出してきた現実から目を逸らして欲しくはなく、それを思い出させようとします。そうすると、Dionは、自分は悪い子だから、他の子が遭わないこんな辛い目に遭うのだと自分自身を責め始めます。Lenaは、私たち子供が、大人の行動をコントロールできるわけなどないのだから、Dionが悪いわけではない、と言いきかせます。Lena自身、同じ考えを持ち、それを否定しながら、なんとかやってきた過去の道のりを思うと、世の中の理不尽さにさらされる子の前に立ちすくむ自分が居ます。

 家出生活は、過酷です。ヒッチハイクは危険ですし、クリスマスにさえ、暖かいお風呂につかることも、ツリーを見ることもできません。車に乗せてくれた人たちや警察に怪しまれない程度には良心の呵責を感じながらもうまく嘘をつく必要もあります。

 それでも、逃げ出してきたLenaの勇気。私は歳を取りすぎていて、もう大きな夢は見られない。だけど、妹は違う。妹と妹の夢は守ってやらなければ、と立ち上がったLena。13歳で歳をとり過ぎていて夢をもてないというのは悲し過ぎますが、それでも胸をうつものがあります。

 悲し過ぎるけど、勇気を与えられもする本です。もし、私が本当に虐待が行なわれていることを感じたときに、思い出したい本ですし、きっとそのときまで心に残る本です。LenaとDion姉妹のみじめな思いを知るだけで終わる1冊ではないので、ぜひ読んでみて欲しいと思います。
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2007年04月09日

「After」

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Francis Chalifour 著
Tundra Books 出版

 「老後がこわい」で、香山リカさんは、今はご健在のお母さまを失ったときに自分がその喪失感から立ち直れるのか不安だと書かれています。香山さんと言えば、テレビのコメンテーターとしても有名で、医師として大活躍されているイメージがあります。ご自分の立場や意見を確立し、自立されているようにしか見えない香山さんでも、親御さんを失う恐怖に慄いている、というのは少し意外なものの、自分も似たようなものだと思うと、人間とは、本音ではそういうものかもしれないと思います。

 いつかは来るとわかっていても、いい歳をした大人が、親との別れを怖いと思っているくらいですから、子供ならなおさらです。しかも、親が自分たちを残して自殺してしまったとしたら。

 そういう喪失感が綴られているのが、この「After」。

 主人公のFrancisが15歳のとき、父親が自殺します。その後の1年間のことを振り返る形で物語は進みます。

 Francisが12歳のとき、船乗りだった父親は職を失い、新しい仕事にも就けず、暗くふさぎこむようになります。Francisが14歳のとき、父親は自殺しようとし、帰宅したFrancisに見つけられ、命拾いします。そして、15歳のとき、Francisが学校行事でNew Yorkに旅行中、屋根裏で首を吊り亡くなります。

 父親が亡くなったあと、Francisは、なぜ父親を残してNew Yorkなどに行ったのか、と自分を責めます。また、友人の両親は元気で、自分の父親が亡くなったことに、理不尽さを感じます。一方、自分の父親は自分たち家族を残していくのをどう思っていたのか、父親に直接きいてみたいと考えます。

 母親を気遣ったり、死を理解できない歳の離れた弟の面倒を見たり、日常生活において一生懸命生きていながらも、Francisは心に大きな塊をずっしりと感じていることが手に取るようにわかります。

 周囲からすれば、「考えても仕方のないこと」と片付けられてしまうような少年の心の葛藤が細やかに描かれているのです。

 暗い気持ちになってしまう本ですが、もし、誰かを失った喪失感に悩まされているなら、あるいは悩まされたことがあるなら、一読されたらいい本だと思います。
posted by 作楽 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:9-12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする