2007年04月06日

「Holes」

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Louis Sachar 著
Yearling Books 出版

 おもしろさのひとつは、物語の絡み合い方です。約110年前から始まる昔の話と現代の話が交互に語られ、うまく絡み合います。また、それらの伏線が、意外なところで、意外なかたちでつながっていくのです。

 もうひとつのおもしろさは、いい意味での裏切り方です。前回はこういうパターンだったから、今回も同じパターンかと思えば、あっさり裏切られてしまいます。

 最後のおもしろさは、自分に不利にならないようにチーム内でうまく立ち回ることを懸命に考えたり、仲良くなった仲間のことを心配しながらも自分の身の安全とを天秤に掛けながら悩んだり、子供ながらに色々考える主人公の少年Stanlyの心の動きです。

 場所は、Texas州のGreen Lake Camp。Lakeは湖ですが、現在そこにあるのは、オークの木が2本しかないようなカラカラに干上がった、昔の姿を想像すらできない乾燥地帯。しかも、Campと言いながら、そこは罪を犯した少年が更生するための施設。くる日もくる日も、穴をひとりひとつずつ掘り、人格を形成する、ということになっています。ある日、そこに、Stanlyが、有名人がオークションに出した靴を盗んだという罪で入所します。

 Stanlyは、Green Lake Campでうまくやっていくことに知恵を絞りながら、暗黙のルールをひとつずつ学び、ある日、ある結論に達します。毎日穴を掘るのは、人格形成のためではなく、あるものを探すためなのです。

 それと並行して、Stanlyのひいひいじいさん、ひいじいさん、お父さんのお話が語られます。もうひとつ、Stanlyのひいじいさんの時代に生きたSamとKatherineの話が加わります。それぞれの話が進むにつれ、まったく関係ないように見えたそれらの話が徐々に結びつくようになっています。

 出来事は偶然ばかりの集まりですが、それぞれの人物の心の動きが自然なので、引き込まれてしまうのです。物語が絡み合いだすと、読むのを止められなくなってしまいました。
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2007年03月27日

「A Candidate for Murder」

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Joan Lowery Nixon 著
Bt Bound 出版

 舞台が少し物珍しい感じがしますが、全体的に読者を引き込む力が弱いミステリなので、少し物足りない感じでした。

 Texas州知事に立候補した父を持つCaryというニックネームの16歳の女の子が主人公。父親は石油会社を経営し、どちらかというと堅い感じで正義感を持ち合わせているタイプです。それゆえ、現知事の不正や公共事業の腐敗を見過ごせず、自ら知事選に立候補する決意をします。Caryはそんな父を誇りに思い、忙しい父親と過ごす時間が少ないことに多少不満を抱きながらも快適な生活に満足しています。そして、社会に貢献する仕事を生きがいにしている母親ともうまくいっていて、ボーイフレンドや親友ともいい関係を持っているという、絵に描いたような暮らしをしています。

 しかし、そんな夢のような暮らしに、色々な不安が襲ってきます。車で後を付け狙われたり、変な電話が掛かってきたり、部屋に不審者が進入してきたり。そういうことが重なり、Caryは自分の周辺の人々に疑いの目を向け、誰が味方で誰が敵なのか、調べたい衝動に駆られます。そして、そもそも、自分あるいは自分の家族がそんな目に遭うのはなぜかその原因を必死に考えます。

 そして、あることに思い当たります。それは、小説の初めに出てくるパーティのシーン。すべての鍵がそこにありました。

 Caryの周りに起こる事件があまりにもありふれていること、心理描写が浅いことなどから、あまりドキドキ感はありません。

 ただ、基本的に時系列で物語が進んでいくため、英語が多少苦手でも読みやすいと思います。
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2007年03月09日

「Jumping the Scratch」

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Sarah Weeks 著
Laura Geringer Books 出版

 CDが一般的になる前、真っ黒な色をしたレコード盤で音楽を聴いていました。そうっと針を落とすと、レコード盤の微かな上下に合わせて、針が上下しながら、細い溝の上を辿り、徐々に盤の中心に向かっていくのをじっと見ていた記憶があります。

 でも、偶然何かでレコード盤が傷ついてしまっていると、同じ箇所を繰り返し繰り返し針が辿ってしまうことがありました。そんなときは、針を一旦持ち上げ、傷より少し内側に針をもう一度置いたりしていました。

 この本にタイトルにあるScratchは、そんな傷のことです。本の中では、レコードが傷に阻まれ、同じことを繰り返してしまうときは、ドンと振動を与えると、針が傷(scratch)を飛び越える(jump)と、書いてあります。

 この本は、11歳の少年、Jamieの毎日の繰り返し、行き詰る閉塞感から始まります。

 彼は、事情がある叔母さんと母親と暮らすために引っ越しをすることになってしまいます。離れ離れになってしまった父親とは、その最後に後悔が残っている状態。新しい学校にも馴染めず、2ヶ月経っても友達もいません。スクールバスではいつもガキ大将にからかわれ、先生には間違った名前で呼ばれ続け、おまけに、ある作家が特別授業に来たときにも、ちょっとした間違いを犯してしまったり、大人同士の訳知り顔の会話を小耳に挟んでしまったり。そして、何よりも、どうしても忘れたいことを彼は抱えています。あまりいいことない生活。それが、あることをきっかけに変わっていくのです。それが、本のタイトルにあるjump。そしてそのあることは、彼にとっても大きなきっかけになり、またある人にとっても、大きなきっかけにもなるのです。

 そして、叔母さんが抱える病気がタイトルのscratchともjumpとも密接に関わっています。

 著者は、あの「SO B. IT」で有名になったSarah Weeks。この本の著者の欄の下にも「AUTHOR OF SO B. IT」と書かれています。

 タイトルの通り、ドンという振動ひとつがきっかけになって、大きくジャンプし一気に乗り越えていくJamie。一方、「SO B. IT」のハイディは、ひとつひとつ経験しながら、ひとつひとつ学び、自分で道をこつこつ切り開いて、最後には自分にとって大切なものは何かわかるという感じです。そして、どちらも、最後の展開に向かいつつ、「これ」は何なのと、気になる「これ」が先へ読み進みたいという気持ちの種になってます。

 もちろん、どちらがいいというものではありません。ただ、私個人の好みでいうと、少しずつ問題にぶち当たりながら、前に進み続けるハイディのほうが感情移入しやすく、読後の心地よさが続きました。でも、この「Jumping the Scratch」も、大人が読んでも楽しい本であることは間違いありません。
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2007年02月15日

「The Switch」

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Anthony Horowitz 著
Walker Books Ltd 出版

 最近、英語の児童書を読むようになって、日本とアメリカやイギリスの違いを感じることがあります。といっても、私が日本語で児童書を読んでいた時代と今では、子供を取り巻く環境も違うので、一概には比べられないとわかっているのですが、やはり文化的な違いも多少はあると思ってしまいます。

 たとえば、この「The Switch」に出てくるTad Spencerという少年ですが、14歳の子供がそんなことを知ってもいいの、という事実を知ってしまうことになります。

 Tadのお父さんは、大企業も爵位も所有し、大豪邸を構えながらも、恵まれない子供たちのために活動し、秒刻みのスケジュールの中、ほんの数分ながらもTadと話そうと努める、ありえないようなスーパーお父さんとして登場します。しかし、そのお父さんには、裏の顔があったのです。それを知ってしまうTad。そして、自分自身をも客観的に見ることになってしまうTad。

 14歳の子供が主人公で、その年代の子供が読む本の設定がそれでいいの、と思ってしまいます。私が中学生だった頃、そんな身近な人が悪いことをしているという現実味のあるストーリーの話を読んだ記憶がないのです。悪人は、自分には関係のない世界の人、あるいは、おとぎ話の中の人、という設定だったように思います。もしかしたら、そういう本だけが選ばれて与えられていただけかもしれません。

 私が14歳の頃にこんな本を読んでいたら、どう受け止めていたかと考えてしまいます。他人の犠牲の上で、裕福な暮らしをしていくことは幸せなのか。人に優劣をつけ、優位に立つと人を見下す態度をとることをどう思うのか。

 私自身がそんなことを考えるようになったのは、中学生よりずっとずっとあとでした。私を日本人の代表のように考えるのは無理がありますが、子供の発達時期において、人格の形成や自己の確立を想定している時期が日本とアメリカやイギリスにおいては違うような気がします。

 最近、勝ち組や負け組という言葉が定着している日本において、大人の私でも少し考えてしまうような内容が含まれた、子供にも読んで欲しい本でした。しかも、ハラハラドキドキする展開も楽しめ、単純にエンターテイメントとしても、よくできた本だと思います。
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2007年02月07日

「Three of Diamonds」

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Anthony Horowitz 著
Walker Books Ltd 出版

 「Night Bus」「Burnt」に続いて、3冊めのAnthony Horowitzです。「Night Bus」は意外性で、「Burnt」はシニカルさで、私にとっては面白い本でした。そのため、今回もAnthony Horowitzということで、期待していたのですが、その期待は少し裏切られた気分です。

 「Three of Diamonds」には、Diamond兄弟の話が3編(「The French Confection」「The Blurred Man」「I Know What You Did Last Wednesday」)入っています。Diamond兄弟のお兄さんは、Tim。一応、探偵を名乗っているのですが、何かを考えるというにはまったく不向きな間抜けなキャラクターで、大人の雰囲気がまったくありません。弟は、Nick。この本の中には、13歳〜14歳の頃の話が収められています。実質は彼が探偵役です。Timのことをどう思っているのか、どんな性格なのか、いまいちつかめません。両親がオーストラリアに移住したため、彼らはイギリスに2人だけで暮らしています。

 そんな彼らに色々と事件が降りかかってきます。あるときは、懸賞であたった無料旅行の途中でついた嘘がタネになって事件に巻き込まれます。またあるときは、Timが無能な探偵と知らず、調査を依頼してきたクライアントのために働きます。また、高校の同窓会に誘われて、行ってみると人が次々と同級生が殺され、Tim自身も標的になります。

 どの事件もストーリー的には、どこかで読んだことがあるような感じを受けるもので、斬新さがありません。何よりも、「Night Bus」や「Burnt」に比べて、紙幅があるにも関わらず、キャラクター描写が薄い気がします。インパクトがないというか、心理描写がないというか、読み応えが感じられませんでした。

 Diamond兄弟は、他にもシリーズになっているようですが、もっと読みたい、と私が思うようなものではありませんでした。

 ちょっと、残念でした。
posted by 作楽 at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:9-12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする