2010年04月01日

「Out of the Wild」

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Sarah Beth Durst 著
Razorbill 出版

 前作「Into the Wild」では、ジュリーがワイルドのなかに入り込んで冒険が繰り広げられましたが、今回はワイルドからラプンツェルの王子が飛び出してきて、現代のニューヨークやグランド・キャニオンでおとぎ話を再現するかのように王子が冒険するのをジュリーが追うという展開です。

 ジュリーは、ラプンツェルと王子のあいだの子供で、ラプンツェルは王子を残してワイルドから逃げ出し、こちらの世界でジュリーを産んだという設定なので、今回の冒険は、親子の再会や離れ離れだった親子が身近に存在する違和感のようなものも、冒険に添う軸のようになっています。

 しかし、王子は父親でありながら、現代では何も知らない赤ん坊と大差ありません。車や高層ビルを見たこともなければ、空飛ぶほうきでニューヨークの摩天楼を駆け抜ける姿をテレビ中継されても、それがどういうことを意味するのか、まったくわからないわけですから。そんな場面をくすっと笑ったり、ジュリーにちょっと同情したりしているうちに、今回も次々とおとぎ話が繰り広げられていきます。読んでいて、あまり馴染みがなかったのは、ルンペルシュティルツヒェン。グリム童話に登場する金を紡ぐこびとのようです。ほかにも読んだことのあるおとぎ話でも、そんなバージョンもあるの? という驚きがあったりするのは、前作と同じです。

 ただ、今回は舞台が現代の日常なので、前作のほうが純粋に冒険を楽しめた気がします。(おとぎ話の王子さまに現代男性のように振舞わせる不条理さが、前半では冒険の雰囲気の足かせになっています。後半では、ジュリーもワイルドから世界を救うことだけに没頭した冒険になっていますが。)

 このシリーズはこれだけで終わりかなと思う、おとぎ話風なハッピーエンドでした。
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2010年03月17日

「Claudine at St. Clare's」

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Enid Blyton 著
Egmont Books Ltd 出版

Kitty at St. Clare's」の続編。「Kitty at St. Clare's」が奇抜で面白かっただけに、少々停滞気味に感じられました。今回の新入生は4人。タイトルにあるクロディーヌは、フランス語のマドモアゼル先生の姪。フランス人のクロディーヌとそのほかのイギリス人生徒の価値観の違いにスポットライトが当てられています。わたしの感覚からすれば、海を隔てているとはいえ、フランスはイギリスの隣国のようなもので、双方でそんなに違いを実感するほど文化が異なるとは思っていなかったので、意外でした。

 このシリーズはどれも若い人たちが知っておいたほうがいいことが詰まっていて、書かれてから50年以上たったいまも読み継がれていることに納得してしまうのですが、今回は国による価値観の違いから、人の価値を何で計るのかという問題にも触れています。

 新入生のアリソンは、桁外れに裕福な家庭の子女です。そのアリソンに対抗しようと裕福なふりをするポーリーン。(彼女も新入生です。)お互い持ち物やクラスメートへのプレゼントの高価さを競うのですが、その無意味さがごく自然にわかるように物語が進行します。

 しかし、これだけ説得力ある教えが詰まったシリーズに第2巻から登場しているアリソンが、痛い目にあっても、いつもいつも同じ過ちを繰り返すのはどうなのでしょうか。そろそろ次のステップに進んで欲しい気がします。そのあたりが、停滞気味に感じられた原因のひとつかもしれません。
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2010年03月09日

「Kitty at St. Clare's」

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Pamera Cox (Enid Blyton) 著
Egmont Books Ltd 出版

The Third Form at St. Clare's」の続編。このSt. Clareシリーズにしては少々強引な滑り出しで始まります。キティという新入生が、なんとヤギを連れてSt. Clareにきたのです。もちろん、学校側としてはヤギを受け入れるつもりなどなかったのですが、事前にキティの保護者から校長宛に送られてきた手紙で、コート(coat)を持たせてよいかと問い合わせがあり、プライベートな時間に限るのなら構わないと返事をしてあったのです。しかし、キティがヤギと学校に到着して判明したのは、それはヤギ(goat)を連れて行ってよいかという問い合わせだったというのです。動物も物も同じように扱う英語の動詞を考えると成り立つ話ではあるのですが、やはり常識的に苦しいことは否めません。

 しかし、その違和感が過ぎるとあとは面白くすいすいと進みます。ヤギを連れてくるだけあって、キティの描かれ方は破天荒で、ヤギ自身もこの巻メインのいたずらに大きく貢献します。

 そのいたずらというのは、キティがひとりで計画し実行に移し、クラスメートにとっても大きな驚きとなります。結果だけを見れば、かなり酷いいたずらなのですが、キティにはキティの正義のものさしがあり、それを貫くための仕打ちなのです。読んでいるほうも胸がすく思いでキティを思わず応援してしまいます。

 しかも、あと味がいいことに、校長はそのキティの事情を冷静に聞いたうえで、判断を下すのです。つまり、悪意をもって人を陥れるいたずらと、その悪意に対抗するためのいたずらとは、異なった対処をするのです。

 結果重視の普段の生活では、そういう柔軟さや公正さを忘れがちなので、新鮮な気持ちで読めました。
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2010年02月16日

「The Third Form at St. Clare's」

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Pamera Cox (Enid Blyton) 著
Egmont Books Ltd 出版

Second Form at St. Clare's」に続く、シリーズ5作目です。

 前回同様、主席で驚いてしまいました。前作では2年生だったみんなは3年生に進級しています。そこで、今回も主席生徒が選ばれるのですが、リーダーシップなどに実績ある生徒ではなく、ほかの生徒にもチャンスを与えようという考えから、少し力不足気味のカーロッタが選ばれます。カーロッタは、この機会にリーダーとしての責任を学ぼうと、ひと学期のあいだ頑張ります。子供の成長を考えたいい設定だな、と無条件に感心してしまいました。

 もうひとつ子供の成長でいいな、と思ったのが、才能の発見です。3年生になって最初のこの学期では、学期末に3年生全体で劇を上演することに決まりました。台本からつくるオリジナル劇です。そして、シナリオ・ライターを希望するものはそれぞれ決められた期間で台本を書き、先生と主席生徒が無記名の台本から一番よくできたものを選ぶということになりました。

 ライターに選ばれたのは、演劇スクールから転校してきたレイチェル。演劇スクールでの経験を買われて、監督助手のようなこともこなすことになりました。でも、レイチェルには秘密があったのです。女優になるべく演劇スクールに通っていたのですが、女優としての将来がないと諭され、転校を勧められてこの寄宿学校に来たのが真相でした。その秘密がレイチェルに嫉妬心を燃やすクラスメートのリビーによって暴露されました。将来を悲観していたレイチェルにとってはとても辛い仕打ちだったわけですが、それをきっかけにあるアドバイスを受けることになります。あれだけのシナリオを書けるのだから、ライターとして舞台と関わっていけばよいと。沈んだ気持ちで過ごしていたレイチェルにとって明るい将来が戻ってきた瞬間でした。

 学校が学業だけの場ではなく、それぞれの才能を見つけたり伸ばしたりする場であるというのは理想です。

 本当にこんな学校があればいいのに、と夢見てしまいました。まだまだこのシリーズは続きます。
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2010年02月04日

「Second Form at St. Clare's」

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Enid Blyton 著
Egmont Books Ltd 出版

Summer Term at St. Clare's」に続く、シリーズ4作目です。

 双子がSt. Clareに入学して1年がたち、2年生に進級します。読んでいる側のわたしも3冊のあいだにイギリスの寄宿学校の雰囲気になれてきましたが、それでもやや驚いたことがありました。

 秋に始まるこの学期では、1年生の多くは2年生に、2年生の多くは3年生に進級したのですが、双子が入った2年生には3年生に上がらなかった生徒がふたりいました。アンナとエルシーです。先生たちは、そのふたりを主席生徒とすることにしました。しかし、このアンナはややものぐさで、エルシーは意地悪このうえない性格で、どちらも優秀とは言い難いのです。

 当然、2年生たちは意地悪なエルシーと衝突し、リーダーとして受け入れ難いと考えるようになります。そして、みんなで話し合い、エルシーに直接そのことを伝えます。一方、アンナのほうは、エルシーがリーダーとしてみんなに受け入れられない以上、面倒でも自分でリーダーの役割を引き受けなければならないと覚悟を決めます。

 驚いたのは、そのあとです。アンナは、先生たちにみなで出した結論、つまりエルシーをリーダーから外すということを伝え、先生たちはその決定を尊重します。先生たちは、エルシーが起こした問題の詳細を訊こうとはしません。ただ、2年生のなかでも信頼おける生徒たちもその決定に同意したかを手短に確認するだけです。

 15歳くらいの生徒が集まるこのクラスの運営をこういうかたちで任せられる彼女たちは、わたしの15歳時代とは随分違うと感じました。日本の教育現場は、学力だけで生徒の力をはかり過ぎてきたのかもしれないと、思いました。あるいは、わたしの周囲だけが幼かったのかもしれませんが。

 今回も新入生を中心にいろいろ起こりますが、最後はハッピーにおさまります。5作目も楽しみです。
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